ノンセク おひとり様人生

ノンセクシャルでも幸せに生きたい。セックスできないアラサー女のこれまでとこれからのこと。

どこにでもいる家族の話。

ブログ閲覧ありがとうございます。

仮装に忙しかったり舞台沼にハマったり、オフ会準備などでバタバタしてまして、めちゃくちゃ時間空いちゃいましたが、お久しぶりの更新です。

 

前回の「親友だったあの子の話」いままでの書いてきたブログの中でいちばん反響が大きくてとても驚いています。ツイッターのリプやDMで感想頂いたり…そのへんのPixiv小説よりも長い記事だったのにも関わらず、読んでくださった方々に感謝感激雨アラレちゃんです。

自分の今までの交友関係の様相とか、親友とは一体何なのか?っていうところを掘り下げる内容の記事だったので、リア友に読まれるのがいちばんキッツいなーと思いながら書いてました。だけどいざ読んでもらったら、お前ちょっと変わってるけど、そういうところ含めて悪くないと思っとるで!これからも宜しくな!って言ってくれた最高にクレイジーで愛おしい友達が数名いてくれてめちゃくちゃ有り難かったです。

長文LINEもらってその日一日中大号泣してしまった。彼らのことは自分のお葬式に呼ぼうと思います。ちゃんと遺書に書いとくから。みんなお願いだから私より長生きしてや!!絶対やで!!(重い)

 

前回お伝えしていたとおり、今回のブログのテーマは「家族」です。

ノンセク自認当初のお話です。前回にも増してパーソナルな話にはなってしまうんですけど、ここで嘘つく意味も特にないので正直に書きます。それで身バレとかないと思うけど、まあ軽くお話できる範囲のことだけ書こうかなーと思っています。お付き合い頂ければ幸いです。

 

みなさんが思う家族って、どんなイメージですか?

唯一、心が許せる存在?かけがえのない大切ひとたち?それとも、ちょっと口煩くてお節介?悩みの種?たぶん、それぞれ色んな意見があると思います。

家族って、基本的には自分の人生の中で同じ時間を一番長く過ごす人たちだから、お互いに大きく影響しあう存在だよなあ、と感じることが多いです。そして、社会としての最小単位であり構成人数が少ないからこそ、それぞれの特色が色濃く出る。

外から見えない部分も多いから閉鎖的だし、そこで長い時間をかけて形作られていく価値観というものは、特殊である場合も多い気がするんですよね。職業柄、色んな家族の閉ざされた部分を垣間見ることが多くて、その度に本当に色んな家族がいるんだなぁ…と驚く。

外からはちょっと変わってるように見えても、みんなで同じ価値観を持って、慣れ親しんだ環境で過ごすことが心地いいと感じる人にとっては、家に居ることが癒したり得るのだと思う。

 

そんな私もどちらかと言うと、おうち大好き派なんです。社会人アラサーにしてまだまだ実家暮らしで、親のスネかじかじしているくらいなんでね、ええ。こんなんでええんやろか?って不安になることもあるけど、正直、実家めちゃくちゃ居心地がいい。

シフトさえ伝えとけば朝は起こしてもらえるし、お弁当も持たせてくれるし、料理洗濯掃除家事全般やらなくても許される。一応お金は入れてるけど、一人暮らしする家賃光熱費考えたら半額以下な訳だし。

そういう目に見えるところだけじゃなくて、ソフト面もそう。仕事で嫌なことがあったら、玄関開けながら大声で「聞いてー!今日めっっっちゃムカつくことあってん!!」って叫んだら、そっからみんなが愚痴を聞いてくれるんですよ。それでスッキリして明日からもまた頑張ろうって思える。

一人暮らししたいなんて、ゆめゆめ思ったこともなかった。大学も就職先も、一番譲れない条件は実家から通えること。いまの職場なんて家から車で5分ですからね。最悪、歩いてでもいける。

実家、最高にも程がある。

そう思ってたんです、去年の夏までは。

 

 

ノンセクシャルを自認して、わたしの価値観はそれはもう180度ひっくり返るくらいに変化しました。いままで当たり前に思っていたことは、全然当たり前なんかじゃなくって、いろんな生き方があっていいんじゃないか?と思えるようになりました。

それまでは結婚して子どもを産み育てることこそが一番の親孝行だ、くらいに思っていたんです。だからこそ婚活もしんどいながら頑張っていたんです。でもその過程で、わたし…恋愛も結婚も全然向いてなくない??って嫌というほど分かってしまったんですね。

それに気が付いたときに、一番最初に考えたことは、人生詰んだわー!とか、この先どうしたらいいの!?とか、そういう未来を憂うことではなくて…

わたしってセクシャルマイノリティだったんだ!!ものすごいことに気がついてしまった!!そうと決まれば結婚とか出産とか無理だし彼氏とも別れよ!!はやく家族のみんなに報告しなくっちゃ!!でした。

そして自認したその日に母親にそのままスピードカミングアウトしてしまったんですねぇ…!

勢いだけでやらかしたカミングアウトは上手くいくはずもなく、そっから大ゲンカ。生まれて初めて2週間くらい口きかなかったです。

 

この話、ほかのセクマイさんにすると、なんでやねーん!!って毎回めちゃくちゃ突っ込まれるやつ。親へのカムってもの凄く気をつかうものだし、普通は慎重になるものじゃないの!?って言われました。

ほんと仰る通り過ぎますよ、そもそも自分も自認したてで混乱してるし、そこまでノンセクについての知識も揃っていない状態で、聞いて!わたし誰ともセックスできないらしい!!びっくりじゃない!?とかカミングアウトしたところで、ちゃんと相手に分かってもらえる訳がない。当然の結果としか言いようがない。

いま考え直したら、完全にマズってたな…ってすぐ分かるんですけど、あの頃の私は早く言わなくちゃ説明しなくちゃ!っていう思いしかなかったんです。

 

なんでそんなことになっちゃったんだろう?って原因を考えてみるんですけど、やっぱり私が実家と家族が大好きだからこそなんじゃないかなあ?と思います。

今まで家族のみんなと自分の価値観は一致していて当たり前だったんです。ノンセクの自認をして、これは自分がズレはじめてんな…ということに気付いたから、そこを早めに報告修正穴埋めしたくて仕方なかったんじゃないかなぁ…と。ちょっとズレはしたけど、いままで上手くいってたんだから、その価値観の変容も受け入れてもらえるに違いないって、信じて疑ってなかったです。

受け入れてもらえないかも?っていう予想すら出来てなかったので、「なに寝ぼけたこと言ってんの?セックスできない人間なんているわけないでしょ、あんた頭おかしいんじゃないの?結婚しない人生なんて許さないからね!!」って母親にガチギレされて、こっちのほうがビックリしたし、絶望感半端なかったです。

信用してた、信頼してた、そういう人たちから拒絶されること、認めれないこと、受け入れてもらえないことって、こんなに辛いんだなって思い知りました。

 

カミングアウトからの2週間、毎日のように泣いて泣いて、大好きだった家に帰りたくなくて、ほんとに病みに病みました。ノンセク自認にあたっては彼氏とのやりとりよりも、家族との擦り合わせのほうが断然ストレスの連続だった覚え。

彼氏は別に切ればいいから、理解してもらえなかったとしても構わないし、好きにしてくれって感じだったんですけど、家族はそういう訳にはいかないですからね。

カミングアウトしなければこんな苦労もせずに済んだのかも知れないですけど、家族に話さないっていう選択肢は最初から私の中にはなかったので。ここまで苦労するとは正直思ってなかったところもあるんですけどねー!!馬鹿ー!!

 

母とはしばらく冷戦状態が続くわけですが、そこでは姉の存在がとても救いでした。年齢も1個だけ上で年も近くて、もともと仲はいいほう。姉がどうかは知らないけど、わたしは自分のことシスコンだと思ってる。

ノンセクのカミングアウトは母が一番最初で、姉が二番目だったのですが、姉の反応は母とは全然違っていて「お前は昔からそんな感じやと思ってたけど??」って全然驚いてなくて、それはそれで拍子抜けでビックリした覚え。

「で?家出するん?応援するで?」って言われたけど、流石にそこまでは…って尻込みしたら、なんやねん中途半端かよー!とことん戦えよー!とか何とか言われて、姉は私とは違って昔から反抗が得意だったなーって思い出して笑った。姉が何回もゆっくりわたしの話を聞いてくれて、母との間を取り持ってくれたんです。

 

母へのカミングアウトの中で、わたしが一番ショックだったのは、母を安心させたくて始めた婚活で、しんどい思いをたくさんして自分なりに頑張った結果、やっとこさたどり着いた答えを、そんなものは思い違いだと言ったこと。わたし自身の在り方そのものを否定して、人間として欠陥があると言い切ったことでした。

母はそれを全然理解していなくて、婚活やめる!って言って怒られたから拗ねてる、くらいにしか思ってなかっただろうところが、余計にムカついてたんですよね。こっちは怒ってんだよ、そういうこっちゃねーんだよと。自分が生んで育てたクセに、実の子どもの私の気持ち、何にも分かんないのかこの人…って勝手に失望したりもしました。

血が繋がってたって、結局のところ母だって他人だし、私とは考え方も生き方も違う。そのことを私自身が受け入れられていなかった、期待しすぎていた、それはあると思います。

姉はそんな私の想いをしっかり理解して、母に分かるような言葉で何度も諭してくれていたようです。私はそれを全然知らなかったんですけど、あんなに分からず屋だった母が、ある日突然的確なポイントをついて私に謝罪してきたので、これは…完全に姉やな…ってすぐ分かりました。

ほんとは母に自分で気付いて欲しかったですけど、それを待っていたらどんたけ時間がかかっていたか分からないし、本当に家出しないといけないところまで関係が拗れていた可能性も十二分にあったので、姉にはとても感謝しています。

 

その後も母とは3回くらい話し合いをして、喧嘩もくり返して、お互いに言いたいことを言い合いました。話し合いの中で、母はひとつの疑問を私に投げかけました。

お前がうまく人を愛せないのは、お母さんが育て方を間違ったせいなんじゃない?

そう言われたとき、ほんとにほんとに辛かったです。そんな疑問を親に持たせてしまっている自分が情けなくて。わたしの思いを母が正しく理解していなかったように、わたしも母の思いをなにも分かってなかったんだなって、このとき痛いくらいに感じました。

 

少なくとも私はちゃんと愛情をもって育ててもらったと思っているんですけど、たぶん母にはその自信が無い部分があって、ずっと不安だったはずなんです。

それは祖父母と母の親子関係が特殊だったことに起因しています。その理由についてここでは詳しく話せないのですが、母の幼少期の話を聞いたり、亡くなった祖母やいま同居している祖父との関係性をみていると、母が満足に愛情を貰えずに育ったことは想像に難くありませんでした。

姉は保育関係の仕事に就いているので、わたしとはまた違った思いで母を捉えているようです。もっとこうして欲しかった、そういう思いがないかと言われたら嘘になるけど、母は自分が与えられるものをできる限り、私達姉妹に与えてくれたと思っています。

 

そんな自分が子どもを持つこと、親として愛情を与えること、ずっと引け目を感じながら母は私と姉を育てていたんだろうなぁ。だからこそ、わたしには真っ当な幸せを手に入れて、母を安心させてあげなければいけなかったのに。自分の人生は自分のものだけど、私が自分らしく生きる決断そのものが、母を傷付けることに繋がるなんて、思ってもみませんでした。

だからと言って、ノンセクだけど我慢して結婚して、我慢して子どもできるまでセックスして、我慢して生きる。その選択をすることはどうしてもできませんでした。結局わたしは自分が可愛いんだな、そう思ったら涙も出なくて、乾いた笑いだけが残った。

 

わたしがこうなったのは誰のせいでもないし、嘆くことでもない。わたしはひとりでも幸せになれるし、それを憂いてもいない。お母さんが気に病むべきことは何もない、ということは何度も言いました。

散々ぶつかり合った結果、もうお前に結婚を強いることはしない、という言質は取ったのですが、私のスタンスを認めてくれたというわけではないと思いますし、まだ親としての責任を母自身は感じているのかも知れません。

そんな調子なので、たぶんこれからも事あるごとに母とは喧嘩すると思うし、何度も説明を繰り返していく他ないんだろうなと思ってます。もう私も大人なので適度に距離を置きながら、母とは過ごしていけたらいいのかな?と考えてます。全部分かってもらえなくてもいいから、分かってもらうための努力は辞めたくないです、家族だから。

 

母と父、姉とお祖父ちゃん、そして私。

それまで家族のみんながそれなりに仲良く一緒に過ごせていたのは、価値観が同じだったからってわけではなくて、その価値観がぶつかることがなかったから。お互い譲れないものが出てきたときに、はじめてそれが表在化するんではないでしょうか?

たぶん、私の本質自体は昔からなにも変わっていないんです。気がついて居なかっただけで、もともと恋愛や結婚が難しいタイプだったと思うんです。でも、そうすることが正しいから、大好きな家族のみんなも私がそうすることを望んでいるから、そういう価値観を上塗りしていたに過ぎないんじゃないかなって。

大人になっていろんな世界を見て、自分と向き合っていくうちに、そのメッキが少しずつ剥がれて、本来の私が見えるようになってきた。長い時間一緒にいるからこそ分かることもあるけど、一緒にいるからこそ見えなくなっていくこともあるんだなぁ、っていう大事なことに気付けた気がしてます。

 

周りからは仲良しな家族にみえても、その中で起きていることは、その中にいる人間にしか分かりません。何の問題も抱えていない家族なんて、きっとひとつもないんです。

色んなことがあったし、これからもたくさん問題は起きるだろうけど、わたしは自分の家族が好きだし、これからも一緒に乗り越えていけたらいいなって、前向きに考えるしかないですね!

 

今年は母の日、なにしようかなー!

 

【宣伝】アセク・ノンセクオフ開催のお知らせ

お久しぶりです、あっきーです!

新年度、みなさんいかがお過ごしでしょうか??ブログ最近更新できてなくて申し訳ないです。今回はちょっとお知らせのために記事書かせて頂いてます。

来月の5月12日(土)にアセク・ノンセク関西オフを主催することになりました!いつも仲良くしていただいているフォロワーのみなさんとお会いして、みんなでゆるっとランチ会をしたいと考えて企画進行中です。

 

ツイプラ ↓↓

http://twipla.jp/events/310000

 

詳細内容はツイプラをご確認下さい。

参加希望の方はツイプラでの参加表明か、私のツイッターアカウント(acky2626 )までDMをお願いします。1次締切りは4月20日(金)までです。

1次締切りの時点での人数を参考にお店決めをするので、お店と相談してどこまで待ってもらえるか確認してから、最終締切り日を別に設ける予定ですので、焦らずとも大丈夫です。

皆さんのご参加をお待ちしています!!!

 

親友だったあの子の話。

こんばんは、あっきーです!

前回の記事投稿でこのブログの閲覧者数が1000人を超えましたー!みなさんありがとうございます。思いつきで始めたことですが、他の方の意見を聞いて改めて発見があったり、自分の考えを客観的に振り返ることができたり、とても有意義だなあ!と感じています。なにより書いててめちゃくちゃ楽しいのでしばらくは続けていきたいなあ…。これからもお付き合い頂けると嬉しいです。

 

前回までは、ノンセクの私なりに恋愛について本気出して考えてきたのですが、そっちはほとんど書きたいことは書けた気がするので、ちょっとおやすみ。しばらくは、私自身の体験談を中心にしたお話をさせて頂こうと思っています。ノンセクを自認してから、自分の中でほんとに色んな価値観が変わりました。それによって、今まで私が生きてきた人生や関わってきた人たちまでもが、全く違うものとして目に映るようになりました。

今まで以上にパーソナルな話になってしまうし、思い出すと胃が痛いこともたくさんあったりするんですが、面白おかしいことだけじゃなくしんどかったことも含めて、できる限りありのままに、ちゃんとここに書き留めておきたいと思ってます。

今回は「親友だったあの子の話」です。

 

貴方には親友と呼べる友達がいますか?

そう聞かれる機会って大人になるとあんまりないけど、即答で「親友います!」と答えることができる人って実は少ないんじゃないだろうかと思っている。

もうこの歳になると、こんな私と遊んでくれる友達はみんな親友くらいの気持ち。だけど、その相手も同じように思ってくれているかどうかなんて聞いたことないから分かんないし、勝手に親友自称するのもなんだかなぁ…?と悩んでしまう。なので私はその質問に対しては、仲のいい友達はいるけど親友って呼べる特定の子はいないですね、と答えると思う。

親友居ます!って即答できる人は、どうやってそれを相手と共通認識として持ってるんだろう?やっぱり、私たち親友だよねー!っていうやりとりしてるの?それとも、友達も私のこと大好きに決まってる!って思って勝手に自称してるの?自己肯定感高すぎない?どちらにしてもスゲーなって思うし、少し羨ましい。

 

そもそも親友って何なんだろう?

とりあえずは友達の上位クラスっていう認識。基本は親友は一人だけで、自分の中での仲良しランキング1位の友達のことを言うのかなって思ってる。そして相手の仲良しランキングでも自分が1位で、お互い思い合ってる時に初めて成立する他とは違う特別な友情、くらいに捉えてるんですが…。

よくよく考えたら、それって恋愛で誰かと付き合うこと以上にハードル高いのでは!?恋愛は本能だからアレやけど、親友なんて完全に任意だし作ろうと思って作るもんでもないし。親友居る人なんなの?すごくない?そんなことこのホイホイ世の中で起こるもんなの?もしかして奇跡!??

…とまあ、今現在はこんな感じの考えではあるのですが、実は私にも以前、親友らしき友達が居たことがあるんです。でも、その子と私の関係は、奇跡でも美しい友情でもなんでもない、もっと仄暗くて息苦しいものでした。

 

初めて「あの子」に出会った日のこと、今でもとても良く覚えている。

春の陽射しいっぱいの明るい教室の真ん中で、クラスメイトに囲まれて輝くような屈託のない笑顔を見せる少女、それが彼女だった。

 

地元の小学校は全校生徒150人程度、クラスもひとつだけしかないから幼稚園の頃からずっと一緒、同級生なんて兄弟姉妹同然で全員が竹馬の友。そんな田舎で私は育った。

ほとんどの子たちが小学校と同じ敷地にある公立中学校に進学するのだけれど、狭い世界しか知らないのを不憫に思った母は、私たち姉妹を山の向こうの女子校私学中学へ入学させた。慣れ親しんだ幼なじみたちと別れるのは辛かったけれど、中学はみんなと違う学校へ行くんだよ、と言うことは常々母から言われていたから、そうすることが正しいのだと思ってただ受験勉強をした。自分が望んだ訳じゃないけれど、この学校へ行くことが自分に求められている。12歳の私はそう理解した。

 

今までは近所の見知ったおじいちゃんたちに挨拶をしながら登校して、誕生日も血液型も家族構成も好きな食べ物も全部知ってる、私のこともたくさん知られている、そんな子たちと一緒に教室で勉強をしていた。

それが中学になって、毎日電車に乗って知らないおじさんの隣でつり革を持ち、名前すらも知らない同い年の少女たちがたくさん居るところで、私のことを知っている子なんて誰ひとりいない教室で過ごす。その生まれて初めての経験は私にとって不安と衝撃の連続だった。

担任の先生が言った、一年生のときできる最初の友達は人生の中でも特別です。皆さんたくさんの友情を育んでたくさん学んで大きくなりなさい、と。

当時の私は友達の作り方なんて知らなかった。

 

他人と友達になろうと努力したことなんて、それまで一度もなかった。物心ついた頃から遊んでいた友達ばかりの中で大きくなったから、初対面の同世代の子たちと何を話したらいいのか、どうやって相手のことを知ればいいのか、自分のことを知ってもらえばいいのか、その方法がなにひとつ分からなかった。

お昼ご飯は自分の机でひとりで食べた。たまに見兼ねた優しいクラスメイトが、一緒に食べようよ!と誘ってくれたりしたけれど、話を振られても緊張してしまって何にも言葉が出てこなかった。幼なじみたちの前では普通にできていたはずのことが、何ひとつできなかった。

広い教室、みんなの楽しそうな声、たくさんの人がいるこの場所で、ああ、私はひとりぼっちだ、そう思った。

 

そんなとき、教室の中で一際目立つ楽しげに笑い声をあげるグループがあった。その会話の中心に彼女はいた。雪のように真っ白でニキビひとつないなめらかな肌、キラキラと光る黒目がちな瞳、陽に当たると茶色く透ける細くて長い髪、女の子らしい高くて可愛らしい声。

彼女の全てがとても眩しかった。

そうか、誰からも好かれて友達がたくさんいる子というのは、ああいう子のことを言うんだろうな、それに比べて私はなんと平凡でつまらないことか。輝く彼女の光を浴びて、私は生まれて初めて自分の影を自覚した。

それから私は彼女をよく目で追うようになった。誰かと会話しなくても、彼女のことは教室で耳をそばだてていればそれなりに情報が入った。地元でも有名な高級住宅地に住んでいて、見たまんまのお嬢様。

きっと誰からも愛されて、いろんな人に囲まれて笑って生きてきた、そんな子なんだろうな、羨ましいな、この子みたいになれたらいいのに、ひとりぼっちの私はそんなことばかり考えていた。

 

そんな正反対な彼女と私を引き合わせた出来事、それは部活の体験入部だった。

我が家は母が昔からお琴を習っていて、家にも琴が置いてあった。祖母も母も私たち姉妹には箏曲部に入って欲しかったようだけど、身体を動かすことのほうが好きだった姉はテニス部に入部してしまって、少し残念そうにしていた。特に他に入りたい部活もないし、そのほうがみんなも喜ぶし、お琴も家にあるから練習にも困らないだろうと思い、私は箏曲部に入ることに決めた。

そろそろ新しい学校生活にも慣れ始めた教室の中は、部活何にする?という話題で持ちきりだった。普段はなかなか会話に入れない私も、その時ばかりは話題を振ってもらえて、箏曲部に入ろうと思ってる、とみんなに言った。するとそれを聞きつけたのか「私も箏曲部入りたい!一緒に体験入部行こうよ!」と声をかけられた。その声の主は、あの彼女だった。

 

部活がきっかけで、彼女と一緒に過ごす時間が増えた。もともと自分のことを話すのが得意ではない私だったけれど、そのかわりに彼女は自分のことをたくさん話してくれた。それを私は必死に聞いて相槌を打った。気の利いたことは何も言えなかったけど、それでも彼女は楽しそうに話をしてくれた。

教室でも、彼女のお陰でみんなの会話に入りやすくなった。少しずつだけど、自分のことも話せるようになっていった。ずっと羨ましいと思って外から見ていた輪の中に自分がいる、存在を許されている、ひとりじゃない、そう思えることがとても嬉しかったのを覚えている。

自分が望んで作った初めての友達、私にとって彼女は限りなく特別な存在だった。

 

私の友達ランキングは彼女が堂々たる1位。当たり前だ、友達が他にいないから。それでも彼女からしたら私はたくさんいる友達のうちのひとりに過ぎない。その友達のなかでの私のランキングなんて底辺も底辺に決まっている、そう卑下していた。

そのはずなのに、気付けば彼女はいつでも私の隣にいた。周りのクラスメイトたちからもふたりはすごく仲がいいよね!と言われるほどだった。この子はどうして何の取り柄もない私なんかと一緒に居てくれるのか。

もしかしたら他に友達が居ない私を不憫に思っての同情からかも知れない。それなら私は可哀想な私で居続けよう、そんな風に思っていた。

ある日、彼女は言った。

「私たち、親友だよ」

そう言われた時の自分の感情をあまりよく覚えていない。でもそう言われた事実はちゃんと記憶しているから、きっと嬉しかったんだと思う。親友になった私達は今まで以上にクラスでも部活でも一緒だった。家に帰ったら毎日メールをした。休みの日には毎月のように2人で出かけた。

 

入学して1年が過ぎて2年生になった私たちは別々のクラスになった。その頃には他の友達も出来ていたけど、彼女は休み時間になるたびに私のクラスまで会いに来てくれたので、変わらず一緒に過ごしていた。

2年生にもなると、女子校生活で出会いのない環境にいることに不満を感じるクラスメイトがちらほら出始めた。そんな子たちは近隣の男子校の文化祭に参加したり、紹介で知り合った男の子たちとメールをしたりと忙しそうだった。

それは彼女も例外ではなくて、この間はあそこの学校の文化祭に行ってきたとか、そこで何人もの男の子に声を掛けられただとか、いまメールしている男の子はこんな子だとか、そんなことを嬉しそうな顔で話していた。そうなんだ、良かったね、そんな相槌をうちながら私はひたすらその話を聞いていた。

 

私は同世代の男の子たちと関わるのは苦手だったので、彼女から誘われてもそういう場には行かなかった。だから実際に見たことがある訳ではないけれど、他のクラスメイトたちに比べて彼女はより多くの男の子たちから声を掛けられているようだった。それでも彼氏を作る気は本人にはないようで、その場の雰囲気を楽しんでいる感じだった。

キラキラしていて、もともと人懐っこくて物怖じしない彼女は、きっと男の子たちからも魅力的に見えるんだろうなあ、すごいなあ。私はただ素直にそう思って感心しているだけだった。けれど、彼女のモテ具合は耳の早いクラスメイトたちにもとっくに知れ渡っていて、あの子、ちょっとモテるからって調子に乗ってる、そんな羨みの目が彼女に向けられはじめた。

毎日付きまとわれるみたいに一緒にいて、ずっとモテ自慢聞かされて、あの子のこと、嫌にならないの?クラスメイトにそう聞かれたとき、私は言った。

「あの子は、親友だから」

 

 

うーん、回想長すぎィ…

最初は向こうから言われたことだったけど、自分でもあの子のこと、親友だと思ってたんですね、その頃は。ひとりぼっちだった私を救ってくれた救世主くらいの気持ちで、この子のためなら何でもできる、くらいに考えていた時期もあったくらいです。

いま思い返すと私は私で田舎の芋っこ陰キャを拗らせてた訳ですが、彼女は彼女で、お前よく女子校で生きて来られたな!?って思うくらいに、女社会で生きることに向いてないタイプでした。いわゆる絵に描いたようなぶりっ子ちゃん(死語)ってやつですね。最初の頃こそ可愛がられてたけど、男絡み出したところで息をするだけで女を敵に回す系女子に大変身してた。

そんな彼女とは結局中学高校と6年間まるまる同じ時間を過ごしました。その間に他の部活メンバーとは喧嘩したこと何度もあったけど、彼女とはそれだけ一緒に居ても衝突したこと無かったんですよね。やっぱり気が合ってるから?とか思ってたんですけど、そんなこっちゃないという真実を知るのはもっともっと先の話です。

続いて大学編。

 

 

通っていた中高には付属の大学があったけれど、他に行きたい大学があった私は外部受験をして、高校卒業を機に彼女とは離ればなれになった。それでも頻繁に連絡を取っていたし、たまには予定を合わせて会ったりもしていた。そんな私たちの関係が変化したのは1回生の夏。

彼女に初めての彼氏ができた。

相手は参加しているサークルの先輩。明るくて社交的で顔が広くてみんなの人気者なんだそうだ。彼女にはとてもお似合いに思えた。彼氏ができてからというもの、彼女からの電話やメールの頻度が極端に下がった。正直なところ少し寂しい気持ちもあったけれど、その幸せを喜ぶべきだと思った、彼女の親友として。

大学で新しくできた友達のこと、始めたバイトのこと、彼女に報告したいことがたくさんあった。でも彼女にはいま彼氏がいて、その時間を楽しんでいるのだと思ったら、なんとなく自分からは連絡し辛かった。

その時の私は気付いていない。

今まで何百回とした彼女との電話、自分のケータイを見れば着信履歴に連なるようにその名前があるけれど、リダイヤル画面にはひとつもないということに。

 

冬の気配を感じる冷たい風が吹く頃、久しぶりに彼女から連絡があった。最近、彼氏とあまり上手くいっていないという。

そんな気はしていたけれど、彼氏の愚痴を言う相手としてでもいい、まだ彼女が私を必要としてくれているという事実だけで嬉しかった。恋愛を一度もしたことのない私には、男女関係の機微なんて分かるわけもなかった。それでも必死にその話を聞いて、どんな言葉を彼女がいま欲しているのか、どうすれば彼女が幸せになれるのか、自分なりに本気で考えた。

それでも彼が好き、そう彼女は言った。

彼氏との関係が元に戻れば、私はまた必要とされなくなるかも知れない、いっそ別れてくれたらいいのに。そう思わないこともなかったけれど、彼女は復縁を望んでいて、それが自分勝手なエゴでしかないことを当時の私は理解していたので、その気持ちを必死に殺して彼女の相談に乗った。

 

その年のクリスマス、彼女から連絡があった。

自分以外の女の子にもいい顔をする彼氏にモヤモヤしているという旨の、いつも通りの愚痴を聞いた。それで終わりだと思っていたけれど、その日は違っていた。

サークルの後輩から言い寄られて、寂しさのあまりその誘いに乗った、彼女はそう言った。その後輩には別に彼女が居るとも言っていた。

次元が違いすぎる話に私は戸惑った。彼との復縁を望んでいたのに、どうしてここへ来て他の男が出てきたのか、その男が本気ならまだしもどうしてダブル浮気なのか、全然理解が追いつかない。そして、彼女の幸せを願って、自分の気持ちを必死に殺して相談に乗っていた私のやるせなさをどこへぶつけたらいいのか。

私が頭をぐるぐるさせている間にも、どんな言葉で言い寄られて、どんな風に距離を縮めて、どんな感じでその男と寝たのか、私が微塵も知りたくもないことを、彼女は嬉しそうに事細かに話をした。

「あの子のこと、嫌にならないの?」

クラスメイトに問いかけられたあの日の言葉が蘇る。

その日、私は彼女と初めて喧嘩をした。

 

 

結局のところ彼女は誰より寂しがり屋で、自分を1番に見てくれる相手を欲していたんですね。その寂しさを埋めるために男性を求めることを、今では全然悪いとは思わないんですけど、当時の私には理解するのが難しかったです。

彼女の最優先事項は相手の心の中に自分がどれだけ住めるか、ということに尽きていたので、その素材として私は一級品だったと思います。田舎から出てきて友達なんてひとりも居なくて、真っさらな状態だったんですから、そもそも心の入り口の守りもユルユルだし、独占したい放題。それはそれは住み心地の良かったことでしょう。

でも理由がどうあれ、私は彼女が居てくれたお陰で孤独な学生生活を送らずに済んだ訳ですから、なんだかんだで依存しあって、お互いを利用しあって、そうやって私たちは「見せかけの親友」として青春時代を過ごしてきたわけです。

 

歪んだ依存関係から始まった友情ではあるけれど、私の中で彼女と過ごした青春がかけがえのないものには違いなかったですし、失くしたくないと考えていたので、彼女との関係は社会人になってからも、まだ続いていました。

それでも彼女のモテ自慢や破天荒すぎる恋愛事情にはいい加減辟易していたので、そういう話題が出るとひたすら塩対応に徹していました。こっちが聞きたくないオーラ出してんのに、メンタル強いのか知らんけど、気にせずにずーっと男の話してきてたので、効果は無かったんですけどね!!!

そんな感じで、彼女のかまってちゃんぶりに呆れ果てつつも、曲がりなりにも親友だし、結婚式するときは友達代表のスピーチしてね!とかまだ言ってくるくらいだったので、腐れ縁と思ってこれからも付き合っていくんだろうな、くらいの気持ちでいました。

ところがどっこい、私がノンセクを自認したことをきっかけに事件は起こります。

 

 

婚活をきっかけに私にも生まれて初めての彼氏ができた。なんだか恥ずかしさもあるし、最初にどの友達に報告するべきか少し悩んだけれど、今まで聞いてもないのに散々恋愛話してきたくらいだから、彼女なら私の話も聞いてくれるだろう、そう思って連絡をした。

報告を聞いた彼女はとても喜んだ。相手がどんな人か気になるようで、根掘り葉掘りあれこれ色んなことを聞かれた。それからは、彼氏とのことは何かあれば彼女に相談するようにした。今まで共通の話題ではなかった恋愛の話を彼女とできることが、少し嬉しかったのを覚えている。

だけど、私の恋愛はうまくいかないことのほうが多かった。ひたすらスキンシップが苦手で、その都度彼氏と気まずくなってしまうことをすごく悩んでいた。その頃はまだ自分がノンセクだなんて気が付いていなかったから、その理由が分からなくて辛かった。もちろん、そのことも彼女に相談をした。

 

「彼氏とキスもセックスもしたくないなんてあり得ない。それ、本当に好きじゃないってことだから。結局のところ恋愛のこと何も分かってないよね。」

まるで珍しくて滑稽なものを見るように笑いながら、彼女は一言そう言った。

彼女の意見が世間一般的に見れば正論でしかないことは、ちゃんと理解できた。まともに恋愛出来ない女、間違いない。だけど少なくとも、私が欲しいのはそんな言葉ではなかった。どうしたらいいかわからなくて混乱していること、上手くできなくて辛い気持ち、そういったものにただ寄り添って欲しかっただけなのに。

 

それから程なくして、私はノンセクシャルを自認した。以前に、セックスしたくないなんてあり得ない、とまで言われていたので、私のスタンスを理解してもらうことは難しいかも知れない、そう思った。だけど、親友だからこそちゃんと話をするべきだと考えて、私は彼女へカミングアウトすることを決めた。

ノンセクシャルとは何なのか、私がどう考えているのか、どう生きていきたいと思っているのか、私は順を追って丁寧にひとつずつ彼女に説明をした。こんな私でも受け入れて欲しい、ただその一心で。

話を聞き終えた彼女は思いのほか、ショックを受けた様子も見られず、へぇー!そういう人もいるんだねー!別にいいんじゃない??と言って笑った。拒絶されなくて良かった、私はただそれに安心してしまっていた。

 

ノンセクシャルであることを彼女にカミングアウトしてからも、彼女の私に対する態度や言葉は何も変わらなかった、本当に何も変わらなかった。会えばいつも通り、言い寄ってくる男の話をする。そういう男とセックスはするくせに彼氏は作らずに、幸せな結婚がしたいと言う。

こっちが今は恋愛したくないと言っているのに、新しい出会いの場に行くことをすすめてきた。そして「前の相手が悪かっただけでしょ?まだ男と女の関係を知らないからそんな事言えるんだよ」と諭そうとする。相変わらず彼女の興味は色恋に向いていて、私と話す時の話題も男のことばかりだった。

いい加減に疲れて、男の話はやめて他の話しない?たまには私の趣味の話とかも聞いてくれてもよくない?と聞いたら「えー?それ面白くなさそう!」と一刀両断されて、さすがに閉口してしまった。この子にとって、私という存在はいったい何なのか。本当に分からなくなっていた。ノンセクシャルだから、そういう話題は苦手だから、話したくないから、だから配慮してほしい、ということではない。私がカミングアウトしたときに説明した内容を覚えていないこと、私との関わり方を見つめ直す気が彼女から微塵も感じられないことに、ただ違和感を覚えた。

 

そのとき、ふと思った。
私はいつも彼女の話を聞いて、自分なりに考えて彼女が欲しい言葉を紡いで、幸せになって欲しいと願った。だけど、彼女が私にそれを返してくれたことが一度でもあっただろうか?

思い出したように電話がかかってきたと思えば、彼女が話したいことを話して満足すればそれで通話は終わる。社交辞令でも、元気?最近どう?そんな一言をかけてもらったことなんて無かった。彼女は私のことなんてほんとはちっとも興味がなくて、ただ都合のいい時に話を聞いてくれる相手でしかないのでは?そんな疑念が頭をよぎった。

毎日忙しく働いてたまの休みに彼女に会って、違和感を感じながら話を合わせて疲れて帰る、そんな日々がだんだん馬鹿らしくなってきていた。多分、昔から彼女は何も変わっていないんだと思う。それでも違和感や嫌悪感を持つようになったのは、私が変わってしまったからなんだと気付いた。もう限界を感じ始めていた。彼女と会う頻度はどんどん減っていった。

 

去年の年末、忘年会でもやろうよ!と久々に彼女から誘いの連絡があった。正直乗り気がしない、だけど最近あんまり会ってないし年末くらいは…という謎の義務感に駆られて予定を合わせて休みを取った。

そのあとで、急遽趣味の予定が同じ日に入った。彼女と趣味を天秤に掛けたとき完全に趣味に重きがあって、断りたい、そう思ってしまった。今までなら先に約束してたし…と思えていたはずだけど、断りたくなるくらいに彼女と会いたくない自分の気持ちに気付いてしまった。

彼女は怒るだろうか、悲しむだろうか、それでも行きたくないことは変わりはない。そう思って他の予定を入れたいから日を改めてほしい、そう連絡をしてみたら、彼女は「そうなの?分かった!」と聞き分けよく私の要求は受け入れてしまって、拍子抜けした。

 

自分で言い出したことだけど、どうしてそこで彼女が私に対して怒らないのか理解できなかった。私だったら確実にキレる。先に約束してたのになんで?なんの予定があるの?そう文句を言う権利が彼女にはあるはずなのに、どうしてそれを言わないのか?

建前ばかりで正面から向き合ってくれている感じが全くしなかった。タイミングが合わなければ会えなくてもそれでいい、感情をぶつけることすら面倒だと思われているような気がして。もともとどうだって良かったけど、心に住まわせてもらえなくなったから、私という人間に余計に興味がなくなったんだろう。そうとしか考えられなかった。

彼女の本音を聞いた、そう感じたことは思えば一度もなかった。お互いの想いをぶつけて衝突したことなんて一度もなかった。いつも私が一方的に怒ったり悲しんだりしていただけで、彼女は私の瞳の中に映っている自分にしか興味がなくて、私自身のことなんて最初から見てなかったんだ、そう思った。

 

「こんな親友おかしい、もう辞めにしよう。」

そう言った。

春の日差しが明るい教室で、彼女と初めて会った日からもう15年が過ぎていた。

 

 

15年っていったら私の人生の半分以上ですよ、青春のほとんどを一緒に過ごした友達ですよ、それだけ長く共にあったのに、結局お互いのこと何にも見えて居なかったんです。その虚しさったらないわけですけど、私たちはひとりで生きることの寂しさに耐えられなかった。だからお互いに見たいものだけを見て、色んなことに気付かないフリをして、依存しあってここまで来てしまった。それに尽きると思います。

歪んでいることには違いないけれど、それをいけないことだとは責められないし、彼女といて楽しかったことだってたくさんあった。当時の私たちはそれで良かったんです。

 

だけど私はノンセクシャルの自認をきっかけに、独りにならないために自分を殺して誰かに尽くすことより、独りぼっちでもいいから自分が自分らしく生きることが大事だと考えるようになりました。

自認に至るまで、今まで人生でこんなに悩んだことない!ってくらいたくさんのことを考えました。自分で考えても答えが出ないことが多すぎて、普段はしないけれど色んな人に自分自身のことを真剣に話す機会を多く持ったんですね。その結果、ちゃんと私と向き合ってくれる人とそうでない人が周りにいるぞ、ということがこの歳になってやっと分かってきたのです。

つまり「自分を殺して誰かに尽くす私」に興味があるだけ人と、「私自身」を大切に思ってくれている人を見分けることができるようになったのです。

 

そういう価値観の変化があって、改めて自分の隣にいる親友と思ってた人間を見てみたら、なんだコイツ!?ってなっちゃったんです。百年の夢から醒めた的なアレ。

彼女は最初から私たちの関係のいびつさを理解していたと思うんですけど、私が彼女に依存していることも同時に分かっていたはずなので、まさか親友辞めようなんて言われるとは、思いもしなかったのか。LINEもツイッターもブロックしたら、別垢作って監視されたりネトストまがいのことをされました。

そこまで執着されてるとは思ってなかったので、正直かなり驚きました。私に対する興味はゼロでは無かったってことかな??とも思ったけど、ただ私の裏切りが許せないだけの可能性も微レ存なのでなんともはや。実はめちゃくちゃ恨まれてるのでは!?刺されたらどうしよう!?って思わなくもないけれど、縁切りしたことに関しては全くもって後悔していません。彼女に依存していた私と綺麗さっぱり決別したかったので!

 

まさかノンセク自認が親友との縁切りのキッカケになるなんて、私自身もびっくらぽんなわけですけど、これもいい機会だったのかなーって今は思ってます。

現在仲良くしてくれている友達は少なくとも私自身のことを見てくれる人たちなので、とても信頼できるし、何でも相談できる。こういう人間関係が健全だっていうのをやっと理解できたことは喜ばしいことなのかなと、ポジティブシンキングしてる。

ノンセクシャル、お一人様人生!って言ってるけど、全くのひとりで生きていくなんてことは、やっぱり寂しいし私には難しい。私のことを理解して、それでも付き合ってくれている友達がいるからこそ、こうやって毎日楽しく過ごせていると思ってます。友人各位、みんなありがとう…ほんとうにありがとう…。

 

世間一般的な恋愛感情があんまり分からない私にとって、友愛というのは他人に向ける感情としてはいちばん尊いものに近しいです。だからこそ、友情は大切にしたい。

これからの人生、まだまだ色んな人と出会って、色んな人間関係を築いていくことになると思うけど、私自身ちゃんと相手と真正面から真摯に向き合っていきたいなと思います。

 

めちゃくちゃ長くなってしまったけど、最後までお付き合いくださりありがとうございました!

次回は家族の話です!

ノンセクだけど恋愛について本気出して考えてみた 恋愛のメリット編

閲覧ありがとうございます。ちょっと間空いちゃいましたが、お久しぶりですあっきーです。暖かくなったと思って油断してたら寒さ戻ってきて見事に体調崩してます。でもクシャミ止まらないから、もしかしてこれは花粉症なのでは??って疑ってる🤔

更新が滞っている間、ツイッター経由でAセクノンセクオフというものに初参加させて頂いてきました!一応、リア友にAセク自認している子が1人いるのですが、その子以外の方とそういうお話をしたことがなかったので、色んな意見が聞けて新鮮でした。セクシャリティって本当に十人十色なんだなぁ…って改めて思った。是非わたしも今度オフ主催したい。

前回は「好き」って何ぞや?というテーマで、ノンセクの私なりの好きについてお話をさせていただきました。ツイッターでノンセクやAセクのフォロワーさんたちから、分かるー!!との感想をたくさん頂けて嬉しかったです。今回は恋愛のメリットについてつらつらと思うことを書いていきたいなーと思います!

 

婚活編でも書かせてもらったのですが、現在の私は結婚はもちろん恋愛願望すらもありません。特に寂しさを感じたこともないし、ひとりで居ても十二分に楽しく人生過ごせてしまっているので、彼氏が欲しいとは全く思っていません。

でも、ロマンティックセクシャルの友達に「今のところ恋愛したいと思えないなぁ…」と話すと、80%ぐらいの高確率で「えー!!そんなのもったいないよー!!」と言われます。

もったいない?勿体ない?MOTTAINAI…??何がどうもったいない??それってつまり…どういうことなんだ??

詳しく聞くと、まだ若いのに!とか、お前それなりにモテそうなのに!とかいうお返事が返ってくる。あなたの価値観からしたらそう見えるんだろうけど、もったいないから恋愛する、という流れにはならない。そもそもしたくないって言ってる。

別に私は自分自身のことをぞんざいに扱ってるわけでもないのに、どうして「もったいない」なーんて言われなきゃいけないのか?全然分からない。そのもったいないっていう言葉の裏に、若さを持ったものは恋愛をすることが義務、妙齢の女が一人でいることなんておかしい、っていう本音が隠れているように私には聞こえてしまうんですよね…。

 

恋愛するのオススメなのに!って思いから、みんながそう言ってくれてることは理解できるんです。だけど本気で私に恋愛させたいなら、義務とかそうすることが常識だからって話じゃなくて、もっとメリットを前面に押し出したプレゼンをすべきなのでは??

テレビや漫画は恋愛は尊い!ってゴリ推しの割に、私は恋愛しててこういうとき楽しいよ!恋愛するとこんなにいいことがあるよ!だからあなたもやってみたら?って、誰かから直接言われた経験はまだ一度もないんですよねぇ…不思議。

 

またオタク目線で考えちゃうけど、新しいジャンルを他人に布教するときに、いま流行ってるのにこっち来ないなんて遅れてる!おかしい!って煽る人います??そんなこと言われたら逆に行きたくなくならない??私だけ??

世界観はこんな感じでね、キャラデザとCVはこうでね、メディアミックスはこんな感じでね、二次もめちゃくちゃ盛んやで!このキャラとか魅力的でオススメだよ!って具体的に良さ勧めてくれたら、ちょっと興味でるやん?そういうものじゃないの?

恋愛ジャンルの人、ちょっと布教ヘタすぎない?永遠の旬ジャンルやからって調子乗りすぎでは??そんなままではジャンルに明るい未来はねーぞ!!って思っちゃう。

 

こないだツイッターで言ってたんですけど、自分がちょっと興味あるかもなーって思うジャンルがあったとしても、そのファンと関わるうちになーんか苦手意識できちゃって、結局履修しないままに終わることってあるよね…という話。私、恋愛ジャンルがまんまそれなんですよね。

女子校中学高校時代、自分の周りでひどい恋愛をしている友達が多すぎた。すごい独断と偏見だと思うけど、女子校女子って基本ダメンズウォーカーなんですね。全く男を見る目がない、クズみたいなのにみんなすぐ引っかかる。どこに行ったらそんな人と出会うの!?って逆に聞きたいくらいの底辺さ。

何度も浮気されてる子、まだ学生なのに彼氏に十万単位でお金貸してる子、DVされて心も身体もボロボロになってる子、ここでは書けないような酷いことされてる子もいた。

あまりにも見てられないから、もうそんな男やめときなよ!って親友くらいに思ってた友達に注意したら「彼のことそんな風に言うなんて許さない」とかなんとか言われて、殺意のこもった目で睨まれて1ヶ月くらい口聞いてもらえなかったことがありました。

私は友達だからこそ心配してそう言ったのに、どうして無視されなくちゃいけないんだろう?私とのほうが付き合いも長いのに、なんであんな酷い彼氏のことのほうが大事なんだろう?昔はあんなに素敵だったのに、 この子は変わってしまったんだな。男の人って怖いし最低だ、私は恋愛なんかには絶対溺れない。そう心に誓ってしまったんです。

 

きっと私の周りにもステキないい恋愛をしているお友達はたくさん居たはずなんですけど、そういう話はあんまり聞こえてこなかった。今は私が恋愛しませんスタンスで居るから、恋愛の話題はコイツの前ではするべきじゃないと気を遣ってくださって、みんな隠しているところもあるとは思うけども。すまんな。

モテ自慢の話とかマウンティング混ぜてくる女の恋愛話は全く興味ないけど、仲のいい友達の本気の恋バナはむしろ聞きたい派なので、本当はどんどん話してほしいんだけどな。私から話振ることもするけど、みんな照れ屋さんなのか、最近どう?って聞いても彼氏の愚痴しか言わないのね。ぜんぜん惚気てくれていいのに。

そうなると自然と私が知ってるのは友達が彼氏と喧嘩した話とか、彼氏のここが不満とか、そういうマイナスな話ばかりになってしまうので、そこでも私は恋愛のメリットをイマイチ感じることが出来ないんです。

 

こう書くと、恋愛できないことを周りのせいにしているみたいに聞こえちゃうかも知れないですけど、そういうことではないです。私には元々そういう性質があって違和感は感じていたけど、最初から毛嫌いして恋愛をしてこなかったから、実はそもそも恋愛できないと気付くのが遅れただけだと思っています。

もしも、学生時代に恋愛を上手に布教してくれる友達がいたとしたら、お?ええやんけ!私もやってみよ!ってなって、その辺の男の子とお付き合いして、ナニコレ??恋愛…全然楽しくない、聞いてたのと違う!!っていう結末になってたと思う。どちらにしてもそれはきっと一緒。遅いか早いか、それだけ。

 

それでも恋愛のメリット、私にも全然分からないわけじゃないです。リスロマ傾向あるので片思いの恋の楽しさはちょっと分かるつもり。好きな人のこと考えると毎日が楽しくなる。でも、対人間関係の構図になった瞬間に無理だな…分からん!と思ってしまう。

彼氏と別れたての友達の相談に乗ったりすると「もう男とかどうでもいいわ!懲りたわ!持つべきは友達!わたしもアンタみたいに趣味に生きる!」的な宣言よくされる。でも次会ったときには「気になる人がいるんだー!」みたいな話されるわけじゃないですか?

学生時代のダメンズウォーカーたちも、そんなに酷いことされてもどうして許せるの?って聞くと「彼のこと好きだから、愛してるから、私にはあの人しかいない」って、傷だらけの心と身体で幸せそうに笑うんです。そんなの、私には分かるわけない、こちとらどういうコッチャ!?って感じです。

なんていうか世の中の人たちが、恋愛したいからしてるんじゃなくて、しないと生きていけないから恋愛してるように見えてしまう。もうメリットとか超越してる、それって…依存とか中毒ってやつじゃないの!?何それ怖い!!と、正直思ってしまう。

 

どうしてみんな愛し愛されたいんだろう。恋愛や結婚をしたいと思うんだろう?周りの恋愛している人たちに言語的に納得のできる説明を求めても、ちょっと難しいなぁ…って言われたり、理屈じゃないからそんなの説明できないよ!って一蹴されてしまうことがほとんど。

どうして誰も納得できる正解を持ってないの!?ってツイッターで嘆いていたら、私のリア友であるAセクの子が「突き詰めれば恋愛も結婚も、生殖の過程の一部だから、みんな本能からそうしてるんじゃない?」という旨のリプをくれて、目からウロコばらばらに散らばる…花びら雫は紅。

そっか、生殖の本能…!好きって何ぞや?の前回に引き続いてまた来やがったぞ!結局のところ、恋愛の全てはセックスに通じているということなのか。ノンセクシャルの私には理解できなくて当然であった。そもそも、恋愛ってどんなメリットがあるの?とか、理性的に考えようとしている人は恋愛向いてないってことだな、あー!なるほどなるほど…!

 

本能ってものは、生物として生きるために必要だから備え付けられる。人間、食欲も睡眠欲も満たさなければ死んでしまう。でも、性欲…って言うとちょっとズレてしまうから、恋愛欲って呼ぶことにするけど、それって必ずしも必要なものなのかなぁ?

子孫繁栄は大切なことかも知れないけど、それは人間という種族にとってそうなのであって、私自身に当てはまることではない。産みたい人は産めばいいし、セックスできる人がすればいいじゃん…なんで全員強制参加みたいな空気感出してくるの?

マジ勘弁してくれー!!って思う。

 

みんなの恋愛欲は本能だから、それが分からない!できない!なんでしたいの!?って言ってる私のことが、周りからものすごく異質に見えるんだろうな…ってことは理解した。だって、同じ人間だと思ってたヤツがおもむろに「みんな普通にやってるけど、正直なとこ呼吸のやり方よく分からないんだよね…」とか言い出したら、お前マジか!?大丈夫か!?え、死ぬの!?ってなるよね。

今までは周りからの、大丈夫だよ、難しく考えすぎだよ、落ち着いてやれば恋愛出来るよ!っていう言葉かけ、ほんと何なんだよ…具体的な方法とメリット教えろよ…って思ってたけど、そんなの無理に決まってるし、みんな私のことを心から心配して言ってくれてたんだなって分かって、ちょっと嬉しかったり。

 

でも私、呼吸のやり方よくわからないけど、別に息苦しくはないんです。特に実害は被っていないわけです。この子、いつまでたっても息の仕方が分からないなんて!って、親とかまわりのほうが焦ってる。こっちを見て!私は苦しくないし、死なないし、全然困ってないから!!って感じ。

みんなと同じ呼吸のやり方は分からないけど、もしかしたら私はそもそも酸素を必要としない生命体なのかもしれないし、酸素は必要でも肺呼吸じゃなくてエラ呼吸しているのかもしれないぞ??それならそれでいいじゃないですか。ちょっとみんなと生き方が違うだけ。

つまり、私の中には恋愛欲自体が存在しないのかも知れないし、あるにはあるけど、みんなとは違う形でそれを満たしているのかも知れない、そういうことです。例えで余計に分かりにくくなるやーつー!笑

 

恋愛とはこんなに素晴らしいものです!って社会は言うし、人を愛する心はあなたの心も育てます!とかふれ回るし、最近の若者の恋愛離れは問題だ!とか言い出す。恋愛の良さを語るのは勝手にしてくれて良いけど、誰かが恋愛をしないことを責めたり、そう言う人を未熟だと言ったりすることは間違ってると思う。何を大事に思って生きるかなんて、その人によって違うんだから。

私は実際、彼氏を作って恋愛のようなこともやってみたけど、やっぱり良さがイマイチ分からなかったし、楽しいことよりもしんどいことのほうが余裕で上回ってしまっていたので、これ…やる意味あるんか?って思って、恋愛できないししたくないなぁ、と考えてる。

私がノンセクシャルである以上、自分が本能に突き動かされて恋愛をするってことは、今後もないんじゃないかなー?って確信めいたものを感じてる。だけど何かがきっかけで価値観が変わって、恋愛って悪くないかも!って明確なメリットを感じたら、また恋愛してみたくなることもあるかも知れない。あんまり頑なにならずに、そういう可能性もあるかもしれんなぁ?ぐらいのスタンスで、生きていけたら一番心穏やかなんじゃないだろうか?と最近は思いますね。

 

これからも私は恋愛のメリットについて自分なりに考えていきたいし、答えがあるならほしいなぁと思う。私にも分かるように説明できる方がいたらこっそり教えてね。よろしくお願いします。

次回はいつ更新できるかなー??

ノンセクだけど恋愛について本気出して考えてみた。好きって何ぞや?編

こんばんわ!あっきーです。今日から3月ー!今年の2月くんはわたしの推し並みの俊足。オリンピックに夢中になってたら逃げ去っていたよね、ビックリ。

前回までは婚活体験談シリーズをやってきた訳ですが、ひと段落着いたので一旦お休みです。お好み焼きマンとファッションチェッカー☆ピーコ、ともに反響ありまして嬉しい限りです。しんどいながらに婚活したあの日の私は浮かばれた。みなさんありがとう…ありがとう…。

今後は記事ごとにひとつテーマを決めて、自分のこれまでのことやいま考えてること色々お話していきたいなぁ!と思っています。というわけで、前回のあらすじ書くの何気に楽しかったけど今回はナシですよ!笑

 

さっそくですが、今日のテーマはタイトルにもあるように、恋愛における「好きって何ぞや?」です。

恋愛、もう単語聞いただけで身構える程度には苦手意識がすごいですね!婚活しとった奴がなに言うてんねーん!って感じかも知れないですけど、わたし、基本結婚と恋愛はバッサリ分けて考えてます。それは今もそう。恋愛はしたくないけど、結婚はしたほうが良さそうだなぁ…と思って、恋愛経験ないままに恋活ぶっ飛ばして婚活していたくらいなので。

恋愛、結局のところそんなに興味がないんですね。人がしているのを見るのは嫌いじゃないし素敵だなって思うこともあるけど、すすんで自分でしたいとは思えないというか。自分が恋愛している姿なんて全然想像できないし、実際彼氏がいた時もどう振る舞えばいいか分からなくて、めちゃくちゃ悩みました。

その悩んでいたときに、ずーっと考えていたのが今回のテーマ「好きって何ぞや?」ということなんです。

 

好きってなんなんです???

よく言う「ラブとライクの違い」みたいなのあるじゃないですか?あなたのこと好きだけど、そういう好きじゃないんです、的な。ラブが恋愛における好き、ってことなんだろうな!っていうのはなんとなく理解はできる。だけどその「ラブのほうの好き」の中身やライクとの違いが私にはよく分からないんです。

 

ノンセク自認前、彼氏がいた頃は楽しいことより悩むことのほうが断然多くて、恋愛に詳しそうな友達に色んなことを相談していました。その度にみんなが聞いてくれるんです。「あっきーは彼氏さんのことラブの意味で好きなんだよね?」って。

そう聞かれてしまうと、分からなさすぎて頭を抱える他ないわけです。まず、その好きがよく分かんないんだよ!と。お前、なんで好きかどうかよく分からんままに付き合ってん?アホちゃうか?と言われちゃいそうですけど、本当にその通りです、ごもっともです。

悩み抜いて必死に導き出した答えは「決して嫌いではないし、どちらかと言えば好ましい」なんですけど、それを友達に伝えるとみんな一気に表情曇っちゃうんですね。あ、この答えは彼女たちの中では不合格なんだな…ってその表情で悟るわけです。また間違えちゃったんだな、私はみんなと同じ気持ちになれないんだなって悲しくなるわけです。

 

ここまで聞いたセクマイに理解のある方、ちょ…待てよ!ってキムタク召喚したくなりますよね?お前それノンセクやなくてアロマンティックアセクシャル、いわゆるAセクちゃうんか!って言いたくなりますよね。分かる、正直わたしもそう思う。

言葉の意味が分からない人はこのブログの一番最初の記事、ノンセクアラサー、ブログはじめます!を読んでみてくださいね。

わたくしノンセクシャルは自認していますが、Aセクかどうかは非常に悩んでいる部分があります。それでも自分はノンセクシャルなんだろうなぁ…と思っているのは、少なくとも今までに恋をしたことがある、そう考えているからです。

 

初恋は中学生のとき。

地元の小学校からかなり離れた私学女子校に進学して、中学生から電車通学になったわたし。

朝の張りつめた冷たい空気、地下鉄の駅、乗り換えのホーム、白い息を吐きながら気付かれないように、いつも通りそっと隣の列に並ぶ。真っ直ぐに前を見据える横顔をひとりこっそり盗み見ては、今日も素敵な一日の始まりだと感じる。

そんな何気ないことが、嬉しくて嬉しくて仕方ない時期があったんです。青春だねぇ…。まあ、一目惚れの相手は左手薬指にリングが光るブラックスーツのサラリーマンでしたけどね、ええ。

 二次元とかアイドルとか俳優さんとかもそうだけど、やけに昔からそういう自分から遠い存在に恋することが多かったような気がします。どう頑張っても縮められるはずもない距離感、叶わないって分かりきってる想い。それを感じながら一人でする恋がひたすら楽しかったんです。でもその気持ちが「ラブのほうの好き」だったのかどうか、自分自身よく分かりません。

この間ちょっと調べてみたら、恋愛感情はあるけど両思いになりたくないセクシャリティっていうのがあって、リスロマンティックと言うそうです。それまんまわたしなのでは??って思った。わたしはリスロマンティックアセクシャルだったのかな??本当にセクシャリティには色んな種類があるので、日々お勉強ですね。

 

ちょっと話が逸れちゃいましたけど、とりあえずそんなノンセクの私はみんなの言う「ラブのほうの好き」が分からない。一体どういう感情なんでしょう?きっと、人によってその種類も定義も違うんだろうし、一概には言えない部分も大きいとは思うのですが…

自分で考えたところで全然答えが出る気配がないので、だれか教えてくれよぉ〜!と言う気持ちで、周りの人に聞きまくってみたわけです。

 ある人は「一緒に居たいなって思えることじゃないかな?」って言う、またある人は「自分のことはさておき、相手のために何かしてあげたい!って思うことじゃない?」って言う、そしてまたある人は「その人がほかの子と仲良くしていたらムカつくとか悲しくなるとか、嫉妬があったらそれはラブでしょ」と言う。

なんかそれっぽい回答な気もするんですけど、全然しっくりこない。わたし、仲のいい友達となら一緒に居たいし、何でもしてあげたいって思うし、彼氏の話ばっかりされたら嫉妬もしちゃうけどな??それ、恋愛に限ったことじゃなくなーい???という感じ。逆に初恋の人は既婚者だったけど、それに悲しくなることもなかったし、いよいよ訳が分からない。

 

まわりの恋愛に生きている女のコたちを見ていると、彼氏とうまくいっているときはほんとに楽しそうで、毎日お花が舞っている。恋するオトメというやつはこういうことを言うのだな…と思う。

そういう子たちの「好き」はすごい熱量を持ってる。彼氏と毎日会いたいし話したいし声を聴いていたいし、何よりも優先したいしされたいし、もっと必要とされたいし深く繋がりたいんだそうです。ひたすらお熱い、ものすごくお熱い。ヒューヒューじゃなくてジュージューだよ、焼けちまうよ。羨ましいの意味じゃなくて君のその想いの温度に私の心が火傷しちまうよ。

好きな人に対しては、同じ星のもと出会えた奇跡に感謝☆とか、どうか私より健康で長生きしてくれよ…という思いはあれど、それ以上相手に求めることはあんまりないんですよね。熱く燃え上がるこの想い!みたいなものがないに等しい。なんなんだこの差は。

 

なにがその温度差を作り出しているのか自分なりに考察してみるんですけど、やっぱり、私がノンセクシャルだからそう思うんじゃないかなぁ…と考えています。

さっきのラブのほうの好きって何を持って好きなの?の質問に対して、「そりゃアンタ、突き詰めたら結局、そいつとヤれるかどうかやろ!」と清々しく答えてくれたウチの母。たぶんみんなが遠回しに言ってくれていたであろうことを、淡々と伝えてくれてありがとう、わたし鈍感だから気が付かなかった、メッチャわかりやすい。

そもそも誰ともセックスできない私にとってしてみると、ラブとライクの間に違いはあるにはあるけど、他の皆さんほど明確な違いを見出すことが難しいんだと思うんですね。

 

燃え上がるような「好き」、やっぱりそういう愛し方は自分にはできないなぁと思う。いかなる時もちゃんと地に足つけて生きて居たいので、熱に浮かされるのはちょっと、って一歩引いてみてる自分がいる。そんなに全力で燃えてたらすぐ灰にならない?大丈夫?って心配になっちゃう。

それなら低温でじっくりゆっくりポカポカするくらいの「好き」のほうが、個人的に落ち着いていいなって思うんです。熟年夫婦みたいな関係性、すごく憧れてしまう。私の中では想いの熱量よりも普遍性に重きが置かれているのかもしれません。

たぶん、そこの想いに優劣はないと思うんです。どっちも「好き」には違いないわけで、その想いのどちらがより高尚かとか、そんなこと誰にも決められない訳じゃないですか?そこにあるのは温度差だけ。

でも他の人たちは、温度の高い「好き」を何よりも素晴らしいものとして崇拝してるイメージがあって、そこの感覚がなかなか理解できない。いつまでも熱狂的に愛するなんてことできるわけないし、少しずつその想いが変化していくのは当たり前だと思うのですが、それが許せないっていう女子多くないです??

 

個人的な経験則からだけど、長く付き合ってて、別れるカップルの女子が言う台詞ナンバーワンだと思ってるのが「彼のこと好きかどうか分かんなくなっちゃった、今あるの情だけだもん…。」っていう言葉ね。

みんなめっちゃ情のこと悪く言うけど、いいじゃん、情。なにが悪いんだろう、情。学生時代そういう話を何度も聞いたけど、考えても考えてもなにが問題なのか分からなくて困った覚えがあります。全然共感できなくて申し訳ない気持ちになりながら、毎回複雑な思いだった。

恋はいつか醒めるけど情はいつまでも裏切らないし、そっちのほうがよっぽど信頼できるなって思うの私だけです??むしろ私は情が羨ましい。熱いの苦手だから恋愛キャンプファイヤー、お互いの思い燃え盛りきって炭燻ってるぐらいのところから参加したい。なに??炭仕入れたらいいの??

 

わたしにはわたしなりに考える「好き」がある。元彼のことも好きだったら付き合ってたつもりなんですけど、さっき話したように友達に相談してると「それってほんとに好きなの?」って言われることめっちゃ多かったです。その度に私はちゃんと好きなんだけどな…って、悲しい気持ちになってました。

結局のところ、ノンセクシャルの私の恋愛感情に性愛は全く含まれていないので、セクシャルマイノリティではないロマンティックセクシャルの人たちからみたら私の好きは紛い物って見なされてしまうんだろうなぁ、悲しいけど。仕方ないことだったんだろうなって、今は思って納得することにしています。

 

それでも私は自分自身の「好き」に誇りを持ってる。好きって恋愛のそれだけじゃないわけじゃないですか?自分の中で「ラブのほうの好き」に燃え上がるものはないけど、その分の好きの容量が「ライクのほうの好き」に割り振られてるんじゃないかな…?って思う程度には趣味に感情全力投球なんですよね。

オタクではないけど、まあ漫画とか読んだりする友達がいて、その子が私の好きな作品を読んでるって聞いたから、それめっちゃ面白いよねー!キャラ誰推し?あそこのシーンどう思った!?って質問をぶつけまくったら、若干引き気味に「私もこの作品好きだけどそこまでじゃないよ…あっきーの好きとはちょっと違うから」って言われたことがあってですね。いやもう、なんか泣いた。オタクつらい。

でもオタクだからこそ、好きな音楽、好きな映画、好きなアニメ、そういう好きが私にはたくさんあるから寂しくないよ!!ヤッター!!!

 

恋愛も友達も何でもそうだけど、好きの熱量が違うとうまくいかないことって多い気がしてる。逆に好きなものやその愛し方は違っても、そこの熱量さえ合ってたら心地いいなって感じられると思ってるところある。

もう最近は恋愛に生きてる人のことは、恋愛というジャンルの住人だと思うことにしてるんですね。永遠の旬ジャンル。オタク友達の推しCP萌え語り聞くのと、リア充の友達の惚気聞くのは同じだと思えばいいと気付いた。オタクアセクシャル向けライフハック。その解釈いいやんけ…とか、そのシチュ私の推しCPにも流用できそう!って思いながら聞くリアル恋バナめちゃくちゃ楽しい、オススメ。

いまいる周りの友達、みんな理解のある子たちばかりなので、ごめんいまの彼氏さんの話めっちゃ萌えたから、推しCP BL妄想に使ってもいい!?私の脳内だけにとどめるから!!って正直に話したら、笑顔で「いいよ!」って言ってくれるんですよぉ…。ありがとう、みんな大好きー!!!

 

私は自分の好きを誰にも受け取ってもらえなかったとしても、それはそれでいいかなって思ってます。私の中で大事なのは、その「好き」という気持ちそのものだからです。それを自分が分かっていればいいし、たくさんの好きに囲まれて楽しく笑顔で生きていけたら、それ以上に幸せなことなんてないんじゃないかなって。それで十分すぎる。

誰かをうまく愛せない自分には価値なんて無いんじゃないかな?って思ったこともあるけど、自分の価値など誰にも決められるもんでもないし、この世に生まれたからには人生楽しみ尽くしてから死んでやるからな!って心に決めてる。

おひとりさまノンセクシャルの私は、誰よりも自分のために時間もお金もかけられるし、誰よりも自分を愛して生きていける可能性があるのでは!?って大発見しちゃったから、おかげさまで明るく生きていけそうです。それお前、強がりだろって笑われてもいいです!笑

 

だから私は私なりの「好き」を大事に心に抱いて、ゆっくりあたためながら、ポカポカ生きていきたいなぁ…。

 

次回は何の話にしよう??

 

 

結婚願望ないけど婚活!?ファッションチェッカー☆ピーコの正体編

こんばんわ!あっきーです。

今回もノンセク自認前にやってた婚活体験談、第4弾ですね。前回はセクシャルマイノリティとかそっちのけでただの愚痴回だったんですが、それはそれでみなさんの共感頂けて嬉しかったです。感謝…。

ブログのほうにも星??とかいただいていて、恐縮です。はてなブログのシステムがよく分かっていないので、なんとも言えない感じで申し訳ないですが、いろんな方に読んで頂けるのは嬉しいです。ありがとうございます!拙いながらに続けていきたいなって思ってます。これからもよろしくお願いします。

 

では恒例行事、前回のあらすじ!

彼氏いない歴イコール年齢、アラサーを迎えてさすがに焦って、結婚願望ないながらに婚活をはじめたわたし。婚活パーティー、マッチングアプリ、いろんな方法を試しながら遂にひとりの男性と初めて食事の約束をとりつける。しかしその相手はお店の予約をする約束をすっぽかした挙句、初回デートに風月をセレクトする粉もん大好きお好み焼きマンだった!?

支払い割り勘、こっちはカンカン、そんなお前はもうあかん。おニューのコートに染み付いてしまったお好み焼きの匂い、それは苦い思い出となって残り続ける。「こんなはずじゃなかった」想像以上の洗礼に完全にやる気を削がれてしまった私の婚活の行方は…?

 

 お好み焼きマンショックからしばらく立ち直れず、なかなか次に行こう!という気持ちになれないままではあったけど、マッチングアプリは辞めずに続けてました。メッセのやり取りは慎重にすすめて、すぐに会うのはダメだと心に決める。それこそが教訓。

確かに運は悪かったのだろうけど、数ある中からそういうひどい奴を引き当ててしまっている以上、何かしら私にも原因はあるのだろうな…と思い、とりあえず母に相談してみる。

なんでそこ母親!?ってビックリする方もいるかも知れないんですけど、わたしの婚活、母には全開示で進めてました。そもそも婚活するのは半分以上親を安心させるためだったので、ちゃんとわたし頑張ってやってるで!っていう報告も兼ねていたところが大きい気がしている。今考えたらそれもおかしな話なんですけどね。その辺のことはまた別の機会にゆっくりお話しするとして…

 

「やっぱりプロフ写真見て、可愛いですね!の一言も言えない男はダメなんじゃない?」というのが母の意見。マッチングアプリ編でお話しましたが、初っ端から見た目の話してくる人のメッセは全員スルーしてたので、そこの自分フィルターが全然仕事してなかった可能性。

結局のところ、お好み焼きマンは女の扱いに慣れてなさすぎる非モテ男子だったからこそ、あのやらかし具合だったとも言えるわけだし、それも一理あるんかも知れんなぁ…と、考えを改めるわたし。論理的な人から説得されると、なーんか、そんな気がしてきてしまうタイプなのだ。素直とも言うけど騙されやすいとも言う。

とりあえず気持ち悪いし嫌だけど、お好み焼きマンの再来だけは避けたい。まだちょくちょく届いていた「ショートヘア可愛いですね!」メッセ勢の中から、それっぽい人をひとり見繕ったわたし、その人とやりとりをしばらくやってみることにしたのである。

 

相手は5つくらい年上の自動車関係の営業マンだったと思う。プロフ見る限りでは物腰柔らかくて優しそうな雰囲気、ノリもそんなに軽すぎないし落ち着いていて、こいつは絶対学生時代彼女居たことあるなっていう感じ。非モテの匂いは明らかにしない、なんか大丈夫そう、と判断。

メッセのやり取りの中でも、インテリジェンス感じるし、日本語ワカリマスカ!?ってなることもない。悪くない。そもそも比べる相手がお好み焼きマンという名の底辺男なので、自動的にハードルがめちゃくちゃ下がっている状態なのであるが、この時のわたしはそんなことには気付いていない。

女慣れしすぎてるチャラ男は論外だけど、やっぱりそれなりに経験ある人のほうが、コミュニケーション楽なんだろうな…非モテってそれだけで罪なんだな…!とか自分のこと棚に上げて本気で思っていた。

 

メッセのやりとりを何度かしていく中で、そろそろ一度会いませんか?と、相手から言われる。ヨッシャ、来た。この頃にはお好み焼きマンによる心のダメージもほぼ回復していたので、イケイケどんどん状態である。相手の職場が大阪だったので、そのへんでの晩ごはんをすることになる。

前はお店決め、ここで相当揉めたわけだけど、そこはやはりひと味違う。僕に任せてもらってもいいですか?予約しておくので!というスマートな一言でグランフロントのなんかオシャンなイタリアンのお店をおさえてくれた。仕事が早い。送られてきたURLのメニューもとても美味しそうでヨダレが垂れる。こいつ…できる!!!

会うのはやっぱり緊張するし、行きたくねぇー!って思いもあるけど、ご飯美味しそうなので嫌が応にもわたしのテンションは上がる。むしろちょっと楽しみくらいの感じである。みなさん既にお気付きかと思いますが、わたしはすぐに食べ物につられるんです。

 

こないだおろしたコートに念入りにファブリーズをかける。確認がてらスンスン匂いを嗅いでみる、お好み焼きの名残は感じない、もう消えている。大丈夫、今度こそは上手く行くはず。何食べようかな…お腹を空かせたアラサー喪女は大阪へ向かう。

待ち合わせ場所にいた相手は、プロフの写真よりだいぶ若く見えた。パリッといいスーツを着ている、営業マンというのも納得の出で立ち。初めまして、とさわやかな笑顔で言ってくれたその人は、堂々としていて挙動不振な素振りもない。やばい、すごい、めっちゃまともな人来た!!!もうこの時点で軽く感動してしまう。

お店に向かうエレベーターでも、嫌味な感じもなくレディーファーストが自然にできている。座る席もソファー側を当たり前にわたしに譲ってくれた。これは思ったより慣れている感じなのではないだろうか?逆にこっちがちょっと緊張してくる。

 

さすが大阪、サラダからして都会の味がする…とか馬鹿なことを思いながら、モサモサとオシャンな葉っぱを食らう。美味しいご飯にテンションが上がっている私は、さながらスター付与の無敵状態、愉快な音楽をBGMに光り輝いている。いつものコミュ障はどこへやら、とっても楽しくおしゃべりができた。

最初はお互いの仕事のこと。メッセージの中で簡単なことはやり取りしていたので、その情報をもとに話を深めていく。向こうは海外の出張もそれなりに多いらしく、じゃあ英語喋れるんですか?と聞くと「まあ日常会話くらいなら問題ないですね」って、サラッと言っていた。ワーオ、ワンダホー。

趣味はサッカー観戦、学生時代は自分もサッカー部だったとか。あー、分かるわー、サッカー部っぽいわー、めっちゃぽいわー!と思いながら話を聞く。なんていうか、ここまでの流れ怖いくらいに出来過ぎている。文句の付け所が今のところ一つも無い。

 

ここへ来て、次第に不安になってくる。え?この人、まともどころか出木杉クンでは??なんで私みたいな喪女が、こんな人とオシャンな葉っぱ一緒に食ってんの?大丈夫??場違いにも程がない??釣り合わなくない??と思い始める。気付いてしまったが最後、落ち着かなくて仕方がない、どうしようめっちゃお家帰りたい。スターの無敵効果はとっくに切れていた。

考えてみれば相手も貴重な時間を割いて、わたしという人間に会いに来てくれているわけです。こいつは自分が結婚するに値する相手なのかどうか、いままさに見極められている。当たり前のことだけど、美味しいご飯に頭がいっぱいで、都合よく忘れていたんですね。

その瞬間、婚活の厳しさを肌で感じて一気に心がしんどくなる。しかし時間は待ってはくれない。場が解れたと判断したのか、相手からの猛攻がスタート。

 

 結婚相手に求める条件なんかはもちろん、いままで付き合ったことのある男性の人数を聞かれる。いきなりグイグイ攻めて来るやんけ…と内心ビビりまくりのわたし。

結婚相手に求めること…ないですね!とか言ったら、やる気あるんか?おまえ何しに来てん?と思われそうだし、相手は慣れてる風なので彼氏出来たことないとか呆れられてしまうのでは?と思って怖すぎて、正直に話すのはさすがに憚られた。

苦し紛れにそれっぽい嘘をつき、学生時代に彼氏が居たという設定を捏造。この時ほど自分の喪女人生を恨んだ瞬間はない。それなりにひとりでも楽しんで過ごしてきたのに、そんな自分も認めて今まで生きてきたのに、どうしてこんなことになった、もう泣きたい。

 

そんなこちらの気持ちなど露知らず、相手からの質問はまだまだ続く。「こういうマッチングアプリとかはよく利用されてるんですか?今までどれくらいの男性と会ったことあるんですか?」とかすごい鋭角抉るようなボールを次々と投げてくる。サッカー少年のくせに。

ここはもう正直に応えようと思って、○○さんで2人目ですね。と伝えると、「へぇ、その最初に会った人ってどんな感じでした?どこ行って何したんですか?いまも連絡とか取ってるんですか?」って猛追、こわい。

もうこの辺からわたし涙目。あの最初の物腰の柔らかさどこいった?アグレッシブか?そんな感じじゃなくなくなかった!?本気だ!この人は本気で私を見定めに来てるんだ!って分かると、もう自信喪失が半端ない。オシャンなピザの味などすでに分からなくなっていた。

 

聞かれたし仕方ないから、当たり障りのない範囲でお好み焼きマンの話をしたら「さすがにそれはナシですねー。俺、ちゃんと店の予約しといて良かったです」と冗談っぽく言われたけど、全然笑えない。それ、完全にマウント取りに来てるよね?という感じ。

比べるまでもないレベルだから、そんな意識しなくても…って思うけど、前に会った男より俺の方が断然イケてますよね?あなたもそう思いますよね??っていう感じ、ビシビシ出てた。まあ…そう思いますけど、思うけど、その対抗心に若干どころでなく引いてしまう。

お会計のときもお財布出したけど「年上だし男ですから」って言って、一銭も受け取ってはくれなかった。この人は意外と…負けず嫌いというか、ナルシストというか、そういうところがあるのかも知れないなぁ?と思った。自分の中での美意識が高い高い系なのでは???

 

待ち合わせの時間も遅めだったので、その日は晩ごはんを食べ終わるとそのままお開きに。偶然にも方向が同じだったので、一緒に電車乗って帰ることになって、並んで歩きながら駅へ向かう。イタリアンのお店はオシャンな間接照明で暗めだったんだけど、駅の明るい蛍光灯の下に出たときである

「トップスの色、そんな感じだったんですね。深緑かぁ、お店にいるときは黒かと思いました」

って私の服をみながら突然言われたんですね。

 

こっちからしたら、え?だから何?って感じなんですけど、そこでわたしのネガティヴ思考回路が己がシナプスを走り出す。その日、黒っぽいパンツを履いていたから、トップスが黒に見えたのなら、黒々しい格好してやがるなこの女…と、思われていた可能性が急浮上。

トータルコーデそこまでじっくり見られていたのかと思うと、めちゃくちゃゾワゾワしてくる。そんなに相手の服装って興味あるもんなの?お洒落さんなのか?おまえはお洒落さんなのか!?コイツ、男と会うのにウケ考えてパステルカラーとか着れないのかよ…とか思ってたんじゃないのか!?残念ながらそんな色の服は我が家のクローゼットの中には無いぞ!!わたしのパーソナルカラーは黒なんだ!!!!

突然始まったファッションチェックに動揺を隠しきれないわたし「あー、あんまり明るい色の服似合わないし好きじゃなくて、もともと持ってないんですよねー」と苦笑いで答えるのがやっとである。

 

「ふーん、そうですか?肌の色も白いし明るい色も似合いそうですけどね?なるほど、それでマフラーも黒なんですね、それモコモコですごく暖かそうですね」

とか言って次はマフラーの話をしてくる。その日のマフラー、使い古しも良いところで毛玉くんが付いていたんですね。モコモコという言葉に、お前のそれ毛玉だらけやんけ…という意味が含まれているのでは!?との考えに至ったわたし、ファッションセンスのない女のレッテルを貼られたと確信する。

悪かった、私が悪かった、ハイスペックな男である君に似合う女ではないのに、のこのこダサい格好して会いに来てほんとうに悪かった。お願いだからもうやめて、反省してるから許して…と思いながら、電車に揺られた。しんどい、ひたすら心がしんどい。

 

やっぱりそれなりに経験ある人は、相手の隅々までよく見ているんだな、でもまさかファッションチェッカーピーコだったなんて…という驚きが頭をぐるぐるする。

相手にまったく不足は無いけど、逆に私が釣り合って無さすぎてひたすら心がしんどい。前回とは形勢が逆転してしまっている。たしかに私は毛玉モコモコ女だけど、だからといって、ここで終わりにして良いものなのか?逃げ出してもいいものなのか?決めかねているうちに我々を乗せた電車はピーコの自宅の最寄駅に滑り込んでいた。

今日はありがとうございました!とお互い伝えて、電車から降りようとするピーコ。そのときの私はどうすればいいのか分からなくて、多分おかしくなっていたんだろうな。「あの!」って引き留めた挙句、気がつけば「じゃあ、また…」とかなんとか意味分からないことを口走っていたのである。

ピーコもびっくりしていたけど、言ってる私が一番びっくりしていた。なーにが「じゃあ、また」なのか。モコモコ毛玉女の分際で、すごいこと言った自覚はある。これまた次も会わないとあかんやつちゃうんか?なんで自分からそんなしんどいことを…。ってそっから家帰るまで脳内大反省だった、今でも思い出すと気持ち悪くて吐きそう。

 

じゃあ、また、効果なのかよく分からないけど、帰ったらすぐにメッセージが届いていて、次会うときはあっきーさんの地元でご飯行きましょう!と書かれていた。まあ、そうなるわな。そっかー、またファッションチェック受けなきゃいけないのかー、そっかー。

私の中では、また会いたいなぁ!ってすごく思ったからそう言ったわけではなくて、 婚活やらなきゃ、頑張らなきゃ、っていう義務感から思わず絞り出した言葉だったので、なんだか罪悪感が凄かった。結局のところは本心ではない、相手に嘘ばかりついている、最低である。

精いっぱい背伸びして、それらしく見せたところで、いつかはバレてしまうわけだし、自分自身もしんどいし、このままでは良くないな…。やっぱり次会うのはやめておこうかな、そう考えていたんです。

 

2回目は会わない、決意を固めた私にピーコからのお誘いの連絡が来る。

「肉鍋屋さん予約できたので行きませんか?」

あっ…ここ、最近出来たお店ですごく美味しいって話題になってて、なかなか予約取れないって友達が嘆いてたところでは!?って気付いたときには、行きますー!!と即答で返事していた。

あれ?わたし、もう会わないんじゃ無かったっけ??でも、もうお店予約してあるんだよな?私のために肉鍋が待ってるんだよな?肉鍋に罪はない訳だし…とか考え出して、とにかく食べ物を目の前にすると意志が弱い。あの決意はなんだったのか?もしかしたらノンセクで性欲弱めなぶん、生理的欲求が食欲に振り切れているのかも知れない。

 

肉鍋、とても楽しみ。しかし、服だ。なんせ服だ。ピーコのファッションチェックを受けても、涙目にならずに済むように、今度こそどっからどう見てもケチつけようのないイケてる格好をしていく必要がある。そのプレッシャーたるや。そんなに気合い入れておしゃれなどしたことがないので、気が重すぎる。無理。

こないだ明るい色は好みでないと言ったし、そこでパステルカラーなんて着て行ったら、媚びてるって思われそうで癪だし、そもそもそんな格好わたしはしたくない。うまいこと婚活進めたいけど、その過程で自分らしさを捨てるという選択肢は自分の中には無かった。

とりあえず新しいトップスとブーツを買い足して、前とはカバンもコートも変えて肉鍋に臨む。もちろんマフラーは新調した。まあ色味はいつも通りのモノトーンだけど大丈夫、今日のわたしは大丈夫。どっからでもかかってきやがれ、ファッションチェッカー☆ピーコ!!コーデバトルのゴングが高らかに響く。

 

肉鍋の日は休日だったので、ピーコは前回のスーツとは違い私服でやって来た。今思えば、へえ、私服そんな感じなんですね…ってこっちからガチコーデバトル仕掛ければよかったなって思うけど、私は他人のファッションにそんなに興味がないし、メンズファッションにも疎いのでコメントのしようがない。一生懸命思い出そうとしても、どんな服だったかすら覚えてすらいない。

待ち合わせから身構えてたけど、そこではとくにファッションチェックは入らず、肉鍋へ。ほんとにもうこれが美味しくて美味しくて。ピーコの目も気にせずバクバク食べまくる。さすが人気店なだけある、絶対友達とまた来よう…と心に決める。

前回はグイグイ質問されてビビり倒していたけど、2回目なのでちょっと慣れた。向こうはオタクじゃないから、わたしの趣味の話は広がらんなと判断してそこそこで終わらせ、向こうが好きなお笑い芸人のこととか、色んな話をした。

 

今回の肉鍋代もスマートに奢られてしまったわけだけど、人の金で食べるご飯のおいしさ半端ないな、最高。駅までの帰り道、前回はここで入ったファッションチェック。来るか?来るのか!?

「そのブーツ、前のと違いますよね。めっちゃカッコいいじゃないですか、どこで買ったんですか?」

ピーコ、来たあああああ!!!

身構えてたから、前回ほどの動揺はないとは言え、①前と違うと言えるくらいに前回の私の靴を覚えている、②カッコいいという褒め方、③靴の購入場所まで気にする、という違和感全部盛りの一言である。

 

まず①ですけど、それだけの超絶コーデ記憶をされているということは、これから先、ピーコとまた会う機会があったとして、おんなじアイテムを使用すれば、あ!これ前にも見たことある!と瞬時に見破られてしまうということ。そもそもそんなに服持ちでもないのに、被りに気付かれるのは怖すぎる。

純粋にブーツを褒めてくれただけなのかも知れないけど、私にとってみればブーツに言及された時点で、そのアイテムばっちり覚えましたから!っていうコーデバトルにおける宣戦布告でしかない。アッ…だめだ、これお気に入りなのに、目を付けられてしまったから、次からもう履いていけない…私はブーツのこと愛してた…でもごめんなさい、さよなら…という悲しい気持ち。

 

つづいて②ですけど、カッコいい!っていう褒め方ね。女の子からソレ言われたら物凄く嬉しいしありがとー!!ってハグしたいくらいの気持ちなんだけど、男性が女子に向かっていう言葉として、どないやねん?と。

そのブーツは黒のツイード素材がミックスされたショートブーツで、まあどちらかというとキレイ目モード寄りなアイテム。そのブーツ、すごく素敵ですね!くらいだったら、ありがとうございます…ってこっちも素直に言えるんだけど、わたし性格悪いので、女子のブーツにカッコいいって、それほんとに褒めてんのか??って突っかかりたくなってしまうんですね。

考えすぎかも知れないけど、カッコいいという言葉の裏を返せば、つまりは可愛くないってことでしょ?そんな可愛げないもん選びやがって、もっとファーとか付いてる女子力高いブーツ履いてこれねーのかよ、お前は、という意味なのではと勘ぐってしまう。

 

そして最後の③ね、ブーツ買った場所、あなたが知ってどうするんですか?と。お店が知りたいのか地域が知りたいのか定かではないけど、どちらにせよ意味不明すぎない?どゆこと?

それ、女子が言うなら分かる。それいいな!私も欲しい!っていう気持ちから出てくる、どこで買ったの?という純粋な疑問。めっちゃ分かる、わたしもたまに聞く。ということはなに?ピーコもこの靴欲しいの??そんなわけないよね??

ピーコの興味がブーツじゃないとしたら、わたしが買い物をする店や地域そのものが知りたいってことなのでは?と閃く。そこで私が「これ駅前のデパートで買ったんですよぉ〜!」と言うのか、「高架下の商店街で見つけたんですよぉ〜!」と言うのかで、いつもどんだけファッションにお金をかけているのか情報を集めるつもりなのでは!??やっぱりコイツ怖ッ!!!と恐れ慄く。

慣れない婚活により疲れ果て、わたしの認知は相当な歪みをみせていた。もうこんな精神状態ではとてもじゃないけど、素敵な自分を演出することなど不可能。げっそりしながら、前回同様、脳内大反省会しつつ帰宅。 

 

ほんとにピーコ、ファッションチェックさえなければ、文句の付け所ないしとてもいい人だと思うけど、だってお前はピーコ。それ故にピーコ。慣れない婚活、慣れないお洒落、自分をよく見せるための努力、そのたび味わう疑心暗鬼、もういい加減限界だった。ほどなくして開催された、大学の友達との定例会でピーコのことを相談してみた。

オシャレに敏感な人と会うのは緊張するししんどいよねー!という共感はしてもらえたけど、でも流石にちょっと、考えすぎなんじゃなーい??とのアドバイスを頂戴する。やっぱりそうかな、そうなのかな??

そこで一人の友達が「わたし、こないだネットで婚活のハウツー調べてたんだけど、相手の持ち物や服装を毎回褒めましょう!って書いてるの見たで!」と教えてくれたんですね。なんと!!さすが同世代、アラサー仲間!!ありがとう、やはり持つべきものは友達!!

さっそくGoogle先生に婚活ハウツーを聞いてみると、ほんとに書いてる。女性は頑張っているお洒落に気付いてもらえると嬉しいもの。毎回どこかステキだと思うところを探して伝えてあげましょう♡ですってよ。

 

つまりアレか、ピーコはべつにファッションチェッカーな訳ではなくて、そうすることで私に喜んでもらおうと思っていたということか?どうしよう、こっちのお洒落とか気付かなくていいし、むしろ捨て置いといてほしいタイプなんですけど。それ!わたしにとっては逆効果でしかないよ!!!大事件だよ!!!

でもこれでスッキリした。ファッションチェッカー☆ピーコの正体は、オシャレに厳しい意識高い系男子ではなくて、婚活ハウツーを実践するマニュアル遵守マンだったんだな…真面目か。QED、証明終了。

 

ピーコとのコーデバトルはこの先もしばらく続くのであるが、それはまた別のお話。

色々学ぶことがある、婚活。まあ一通り活動してみたけどダメだったし、いまのところは結婚願望全くありません。それが本音です。この通り、しんどいことやイライラすることも沢山あったけど、相手を通して自分とも向き合うとてもいい機会だったなぁ、やっといて良かったなぁ…と今になって思います。

実際に婚活やってみて、やっぱりダメ!全然その気になれないし向いてない!って確信できたところ大きいです。その確信を持っているからこそ、いまひとりで生きていく決意を持って前に進めている気がします。

なので、結婚かぁ…ってちょっとでも思ってる方は、軽率に婚活やってみてもいいんじゃないかと思います。ダメだったらすぐ辞めたらいいだけです。後から後悔するよりずっと良いはずです、限りある人生、ほんとに時間は待ってくれないので…。

 

婚活体験談はここでいったん終了して、次回からはテーマを決めて、ノンセクシャルについて私が体験したこと考えたこと、色々お話ししていけたらいいなぁと計画中です。

ちょっと時間空いちゃうかもですが、また読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございましたー!

結婚願望ないけど婚活!? お好み焼きマンとの邂逅編

ノンセクシャル自認前にやってた、失敗ばっかりの婚活体験談、第三弾になります。

ざざっと前回までのあらすじ。

彼氏居ない歴イコール年齢。結婚願望はそんなにないけど、アラサーになり焦って婚活をはじめたわたし。パーティーは自分の性格に合わない…と挫折を味わい、マッチングアプリに登録する。しかし次々と送られて来る気持ち悪いメッセに嫌気が指し、オタク趣味を大公開する奇行に出る。婚活そっちのけでオタク友達が出来てホクホク気分になったのも束の間、突然の賢者タイムが襲いかかる。とりあえず誰でもいいから会わなきゃ!!と言う謎の強迫観念に駆られ、即席出会い厨となったわたしの運命は!??

はい、そんなこんなでマッチングアプリで出会った男性と初めて会う約束を取り付けたわたし。その邂逅についてを書いていきたいと思います…が!!

あのね、ノンセクだとか言ってますけどぶっちゃけ今回ほんとセクマイ関係ないです。この記事に限ってはただの愚痴です、純粋に文句言いたいだけー。こんなことありました!って言いたいだけのお話。では、さっそく。

 

マッチングアプリからきた「一度会いませんか?」というメッセージ。アラサー腐女子レイヤーという三十苦に怯むことなく挑んできた相手の人は確か、3つくらい年上の隣の市に住んでる公務員だったと思う。正直なところ、私の趣味に文句言わない男性なら誰でも良かったので、他のことはあんまり覚えてません。

いま思い返してみても、メッセでめっちゃ意気投合したな!っていう覚えもないし、ヨッシャ!そんなら会おうや!って思ったのも何が決め手だったのか、全然思い出せないのです。たぶん、そろそろ一人ぐらい会っておかなきゃ…ってちょうど思っていた時期で、タイミングが良かっただけなんでしょうね…怖い…

とりあえず、晩ごはんを一緒に食べに行くことに。最初だし、あんまり長い時間もしんどいかなーと思っての判断、まあそこまでは良かったんですけど…

 

会う日に決めていたのが金曜日の夜。混むだろうから早めにお店決めて、予約もしといたほうがいいだろうな…ってぼんやり考えていて。場所は私の住んでる市の繁華街にしようってことになって、相手はお店も詳しくなさそうだったので、私が決めときましょうか?って提案。

私は自分が決めるほうがスムーズに事が進みそうだと思ったのでそうしたんです。でもそれがたぶん気に入らなかったんでしょうね…俺が決めるんでいいですよ!って言われてしまい、その提案は突っぱねられ…

そういうときのお店決めって男性がするもんなのかな?もっと男性を立てるとかすれば良かったのかな、慣れてないばっかりに悪いことしちゃったかも…ってちょっと反省。でもまあ、相手がどんなお店選ぶかで好みとかセンスとかも分かるし、任せておけばいいか!ってことで、お願いしていたんですね。

 

そして数日が経過。

自分で決めたこととはいえ、当日が近づくにつれてブルーな気持ちに。初対面の男性と喋るの死ぬほど苦手なので、本当のところは会うのだって嫌なんです。でも、これは婚活。やらなければいけない、成し遂げなければならない、それが私に課せられし任務…という気持ちなので、コミュ障の自分を叱咤して過ごす。

そんな私の婚活における唯一の楽しみ、それはご飯。お洒落な都会のお店で食べるご飯。相手のこととか既にどうでもいい、最早、目的はご飯。どんなお店に連れて行ってもらえるのかなぁ…何食べさせてもらえるのかなあ?って、それだけを楽しみにしてなんとか乗り切ったんですね。

アレルギーとか、食べられないものありますか?とか、どんなお店がいいですか?とかも、特に聞かれなかったし、ここのお店いいと思うんですけど、どうですか?とかの相談も連絡なし。向こうで勝手に決めたんかな?まあ好き嫌いないからいいけど…と思いながら、気がつけば当日に。

 

しかし待てど暮らせど相手からの連絡は来ない。お店に合わせて時間と待ち合わせ場所も決めなきゃいけないのに、何の連絡も来ない。わたし約束の日付け間違ってる!?って思ってメッセージ見返すけど、ちゃんと合ってるんですねぇ。不思議ですねぇ…。

え?待て???本当に会う気あります??

ここで私のテンションは地に堕ちる。お洒落な都会の晩ごはんをエサになんとか気分上げようとしていた努力はいったい何だったのか。

死ぬほど嫌だけど、これは任務なので私の方から連絡するほかないと思い「今日のお店ってどうなりましたか?集合時間とか場所も決めてなかったですよね?」って、メッセージを送る。わたし、とても、えらい。

すると相手から「じゃあ18時に駅で!」とだけ返事。じゃあ、って何??舐めてんの??ここで私のテンションは地に埋まる。行きたくない度がMAX、行く前からすでにお家帰りたい。だけどこれが最初だし、ここで会うのやめてしまったらもう婚活自体嫌になってしまう気がして。嫌で堪らないけど、泣きそうになりながらも街に向かう。わたし、とても、とても、えらい。

電車に揺られながら、そういえば集合時間と場所は聞いたけど、結局お店どうなったか返事もらってないな…と思い出す。メッセージで「お店どこになりましたか?」と聞き直してみた、ら…

 

「まだ決めてないんですよね、どこがいいですか?」

とか、言われて…もう…私はもう…。

今から時間を無駄にしに行くということが、大決定した瞬間である。お店決めといてって私言ったよね!?金曜の夜だから!混むから!予約したほうがいいよね?って話したよね!?私が決めようか?とまで言ったよね!!それ突っぱねたのどこのどいつじゃーい!!!

お店決めてなかったことは怠慢だけどそんなことより、私の気遣いを無下にした挙句、約束破られたということが一番ムカつくし悔しかった。泣きながら地下鉄の中でガチで地団駄を踏んだ。人間本気でムカついたらほんとに地団駄踏むんだなって初めて知った。

 

もうコイツと今後どうこうなることはあり得ないので、「予約してくれるって約束破ったんですか?」って、そのままの怒りをメッセージで送る。すると流石に焦ったのか必死でお店を探しはじめる相手。今更???

わたしが心配していた通り、華金、良さげなお店は既にどこも空いてないんですね。「駅近くのお店、何軒か確認したんですけど空いてないそうです…」とか言いやがる。そんなこと知ってるよ、分かってたから予約しとけって言ってたんだろうがよ、ふざけんな。あっきー氏、内心、ブチギレのブッチブチである。

ブッチブチついでにこのままブッチして帰ってやろうかとも思ったけど、もう山越えのクソ高い地下鉄料金も払ってしまっていたし、タダ飯くらい食らわなければ割に合わない。帰りのタクシー代も欲しいくらいの気持ち。「もうどこでもいいんで、予約してください」と絵文字なしで送信する。食べるだけ食べたら直帰しようと心に決める。

 

お店が決まらないままに、集合時間を迎える。駅とは言われたけど、地下鉄?JR?私鉄?それも決めてへんかったわ…と思い出して連絡。わたし、とても、とても、とても、えらい。

「いまどこですか?」と聞くと「お店探して駅から離れてました!」とか仰る。店探しってもしかして徒歩でやってたの??マジか??アナログか??マッチングアプリとか使えるくせに、そこだけなんで徒歩なんだよ、そもそも駅待ち合わせって言ったの誰です???もう怒りを通り越して呆れてくる。

「さっきなんとか入れるお店見つけたんです!」とか自慢げに言うてきたけど、それ事前に済ましとくべきことだからな??もうわたしの心も目も死んでいる。今からわたしが会うのはただの喋るクズなのだなと知る。

もうなんか語気が強くなるし、言葉も汚くなってしまうけど、当時の私の怒りとやるせなさを瑞々しくみなさまにお届けするための言葉選びをすると、こうなってしまうんですね。こればっかりは仕方ないので、このままでいきますね、苦手な人がいたらごめんなさいね。

 

一度駅に戻りますね!と言われたので「JRの東口に居ます」と伝える。しかし待てども来ない。12月の寒空の下、待ち続けるが来る気配がない。どこにいるかもっかい聞いてみたら、全然場所を理解していないんですね。

ヤツは見事に迷子になっていたのである。

ここまで来るとなんか面白くなってきてしまったわたし。「まわりに何が見えますか?」って聞いたら「吉野家?」とか言う。そもそも吉野家とか行かないから、どこにあるかとか残念ながら把握していない。全然分からない、笑う。めっちゃオモロイ。

もうコレ、その奇跡的に予約できたとかいうお店に、私が直接行った方が早いのでは…?と、判断。「予約できたお店の前で待っててください。どこのお店か教えてもらってもいいですか?」と尋ねると、ヤツはこう言った。

 

「あ!風月です!」

そっかー、お好み焼きかぁ…風月かぁ…そっかあー!!どうしてそうなったのかなぁ、そっかぁー!!確かに言った、どこでもいいから予約しろって、わたし言いました、確かに言いました。そやけど!!風月て!!

お好み焼き好きですよ、大好きですよ、風月行きますよ?好きですよ?だけどね、今日さ、新しいコート、おろしたとこなんだわ??ステキなお店でご飯食べられると思ってたから、自分なりにお洒落してきたんだわ??知ってたらね、匂いついても大丈夫な服着て来たわ!!まだ顔も見たこともない相手に殺意を覚えたのはこれが初めての経験である。

駅から近い風月というと、たぶん駅前の店舗だろうな…と思うけど、それ以外にも何軒か風月あるので間違っていても嫌だし「どこの店ですか?」って一応聞く。わたし、とても、とても、とても、とても、えらい。すると相手から来た返事。

 

「あ!お好み焼き屋さんです!」

うん、知ってる!!少なくともお前より知ってる!!もう笑うしかない、他に術がない。何?わたしの聞き方が悪かったの!?え!?何屋さんですか?とか聞いてないんだけど??日本語!ワカリマスカ!??

もうなんか無理を通り越して、ヤツがネタとして面白くなってくる。ここまでのクズいヤツに出会えるなんて、この先ないかも知れないし、これは是非とも会ってみてわたしの人生の鉄板ネタにしてやろうと決める。お好み焼きだけに。山田君、あっきーさんに座布団5枚。

そして駅前の風月へと向かう。店の前にいたのは大人しそうなサラリーマン風の男性。これはもう既に婚活であって婚活でない。わたしの中での目的は面白い人に会いに行く、というスタンス変わってしまっているということに、目の前のお好み焼きマンは気付いていない。

 

簡単に店先で挨拶するが、挙動不審にも程があるお好み焼きマン。もしかしたら私の顔が絶対殺すマンで怖かったのかも知れない。早い段階で会おうとか言ってきたから、慣れてる系なのかと思ったら何のことはない、ただの非モテ系男子だった。私だって人のこと言えた身分でないけど、もう初対面の時点で好感度マイナス五万点なので仕方ないと思う。

会って最初に謝罪があると思ってたのに、それもなし。びっくりびっくり、マジでクズの中のクズの可能性出てきた。待ち合わせ場所、迷っちゃってー!とだけ言われたけど、私が一番怒ってんのそこじゃねーからな、履き違えんな??

さっさと食べて帰りたいけど、お好み焼き、オーダーして焼けて食べられるようになるまでって、悲しいかな結構時間がかかる。その間、目の前の粉もんは色んな話をしてたけど、私はそれを「へー」「そうなんですねー」「なるほどー」の3パターンのみで乗り切る。

自分からは質問しない。目線は鉄板に落として、絶対に目を合わせない。その塩対応を突き通せばさすがに心折れるかな?って思ったんですけど、根本的に空気読めないのか頑張って会話途切れないようにしようと思ったのか、何なのか知らないけど、ずっっっと一人で話してました。よく喋る炭水化物だなぁ…。

 

そんなこんなで、1時間ほどでお好み焼きは食べ終わる。時間もまだ余裕はあるし、お腹もまだ入る感じだけど私はもう早く帰りたいので、そろそろお店出たいオーラを出しまくる。

それには流石に気が付いたお好み焼きマン、出ましょうか!と言い出す。支払いはもちろん出してくれるだろうな!って思ってたけど、財布すら出さないのも何だかな…って思ったので、レジ前でカバンをゴソゴソ。

それをみたお好み焼きマン「あ!助かりますー!」とか何とか言いながら、千円札を一枚引っ込めた。

私はきっちり半分の値段を支払うことに。なんこれ??わたしの塩対応への仕返しのつもりかな??何なのかな??なるほど、なるほど、最後まで期待を裏切らないクズっぷり、すごい、もうこれはすごい。良いこと教えてあげる、お前、絶対、結婚、できない!!!

 

支払いが終わってレジ横に目をやると、出来る子の風月、出口のところにファブリーズを置いている!!先を急ぐお好み焼き焼きマンに、ちょっと待て!と声をかけ、これ見よがしに本日おろしたてのコートにこれでもかとファブる!ファブる!ファブる!!

そこでヤツはやっと自分の愚行に気が付いたようで「あ…お好み焼きって、匂い、付きますもんね…気になりますよね…」とぬかしやがるが、今更である。「そうですね、最初から知ってたらこんなコートは着てこないです」とその時ばかりは目を見てハッキリと伝えたら、さらに挙動不審になった。悪気もないしほんとに無自覚なんだろうなぁ。

もう会うことはないと思うし、お前のここがダメ!とか言って注意する義理もないので、それ以上は何も言わなかったけど、もっと重い罪いっぱい犯してるんだぞ?って感じ。

 

少し元気がなくなるお好み焼きマン。流石にちょっとは心折れたか!ざまぁ!と性格悪くほくそ笑んだのも束の間、店を出た瞬間に

「まだ時間も早いし、カラオケどうですか!?」

とかいうまさかの申し出に、開いた口が塞がらない。いや、いや、いや、この流れでどうして私とカラオケなど行けると思った??本当に何を考えているのか分からない。誘うとしてもそこはカフェとかじゃないの??カラオケてお前、個室やぞ、今日が初対面やぞ???

ドン引きにも程があって、しばらく絶句してしまったけど「カラオケはあり得ないです。今日初めましてなのに個室とか無理です」とクールなトーンで伝える。すると焦ったように「えーっと、えっーと!じゃあゲームセンターとか!」って苦しまぎれの提案。行くわけないやろ、馬鹿か貴様。こいつの心は鋼で出来ているのか?

 

「いまからもう一軒って気分でもないし、明日も仕事なのでわたし帰ります」と言ったら、「そうですよね、晩ごはんを食べるっていう約束でしたし、目的は達成されてますよね」とか言い出す。何やねん目的って。

普通だったら今日はありがとうございましたー!くらい言うけど、失礼します、って一言だけ言ってサッサと風月を後にしました。別れたあと、すぐにLINE来てたけど、ひとりでサンマルクカフェでお茶しながら既読無視からのブロックでトークルーム削除した。それから一度も会ってませーん!!  

婚活始めて最初に会ったのがコイツとか、こっちが心折れる。いい加減にしてほしい。やっぱり、すぐに会おうとか言ってくる奴にはロクな人居ないんだな…という学習はできた、のかも知れない。

 

友達にこの話をしたら爆笑してもらえたから、地団駄踏みながらも会った甲斐はあったのかな?って思ってます。こんな人もいるけど、たぶん少数だと思うので、結婚したい人は婚活頑張ってください。

これが伝説の男、お好み焼きマンの全てです。是非語り継いでほしい…私はもうお腹いっぱいです、ありがとうございました。

次回は、ファッションチェッカー☆ピーコ編です。